意外にも外国人幹部は
無断出国を是認した

 幹部といえども、いろいろな思いや事情はあるだろう。しかし、会社に何ら連絡することなく、無断で帰国することは職務放棄ではないか。もし、直前にでも「これから帰国する」という一報があれば、業務に支障をきたすこともなかったはずだ。

 仮に事前に連絡があれば、人事部長として、帰国を取りやめろとは言えなかったに違いない。しかし、常時メールや電話で連絡ができる状態にしておいて、業務に支障をきたさない配慮をしてもらいたかった。

 有給休暇の残りを使うか、欠勤扱いにするか、そうした申し合わせをすることもできた。外国人CFOといえども日本の就業規則の管理下にあるわけで、無断欠勤は就業規則違反である。社員に対しても、「連絡を受けているので心配はいらない。業務上も不都合はないはずだ」と人事部長として返答できたはずだ。

 しかし、この件で、グローバルHRヘッドと会話した際の反応は、意外にもCFOに対して寛容だった。「CFOだろうが一般社員だろうが、身の危険を感じたのであれば、それを防ぐための行動をとらざるを得ない。人事部長といえども、それを圧してまで、日本にとどまって業務をしろとは言えないはずだ。連絡が滞ったことは確かに気になるが、数日後には連絡を取り合うことができ、リモートで業務ができているので問題は小さい」という意味のものだった。

 この件で私は、国内外による見方の違いが大きいことを思い知らされた。外資系企業で働くには、こうした国による常識の違いを常に頭に置いて事態に対応しなければならない。そのことを改めて痛感した出来事だった。