若手から「離れ小島」と揶揄される超大手企業
日本を代表する超大手企業の花形部門で働き、社内で数々の革新的な取り組みを行ってきたとある20歳代の社員は、自社のことを「離れ小島」と揶揄していた。外の世界から遮断され、組織の内側の話だけで1日が終わっていく。そんな人材が囲い込まれた様子を、彼は情報が入ってこない孤島、離れ小島に例えていたのだ。予想外の言葉に、思わず私は何と言ったのか聞き返したほどである。
あなたの会社はどうだろうか。ほとんどの会社は、社員に自社へ愛着を持ってもらいたい一心だろうし、彼らを囲い込んで情報を制限しようとは全く思っていないだろう。ましてや若手から「離れ小島」と思われているなんて考えたこともない会社も多いはずだ。
さて、日本の就業動向全体を見れば、長期にわたる人手不足によって転職市場は活況を呈している。また、人生100年時代の到来も相まって、若手のキャリア観は大きく変化している。こうしたことから、特に若手社員の転職が増加していると感じる人も多いだろう。
私も名の知られた大手企業から、「優秀な若手が何も言わずいきなり辞めていく」「昨年の20代退職者が過去最多だった」「年収が数百万円下がるのに、若手がスタートアップ企業に転職していく」といった悲鳴のような声をたくさん聞いている。
企業側としては、人手不足のさなか、必死に採用した若手に辞められてはたまらない。そこで、若手の離職を回避するための「リテンション施策」に今、大きな注目が集まっている。
社内メンターの設置や、チームでの懇親会・飲み会支援、社内行事・イベントの開催、そして新入社員向けの社宅まで、施策の幅は広い。ところがこうしたリテンション策は、「会社に愛着を感じてもらいたい」と口では言っていても、「人材の囲い込み」としての色合いが濃く、社内との接触を増やして社外との関わりを減らすことで離職を防止しているように見える。
副業・兼業を解禁する企業も増えつつあるが、経団連会員企業のうち78.1% は、副業・兼業をいまだに禁じている。また、日本の大手企業は生え抜き文化も根強く、社長・幹部には新卒でその会社に入った人が就いていることが多く、採用においても正規社員採用の6割以上を新卒採用で入れている 。転職が一般化したとはいえ、終身一社、「武士は二君にまみえず」(日本のサラリーマンは二社に雇われず?)で、自社の外の世界を見たことがない社会人が多い状況には変わりがない。
しかし、外の世界を見せないことは、本当に自分が働く会社への“愛着”や“忠誠心”、“エンゲージメント”を維持し、高めるのであろうか。
実は、実際には真逆である可能性がある。20歳代の若手社会人2000人以上に対して行った最新の調査結果 からは、興味深い事実が浮かび上がってきた。