一方、上述した調査委員会では、必ずしもエネルギーの専門家ではない方がリードされ、問題の本質に迫る報告書が書かれた。その中には、これまでエネルギー関係の論からは得られなかった分析や指摘もある。これは、エネルギーという社会的基盤の在り方を論じるための場は、エネルギーの専門家ではなく、社会的な公正に対する強い志向と広い社会的見識を持つ人材がリードすべきであることを示している。特に、専門家集団と言われる層に議論や政策運営を任せてきたことが、東京電力福島第一原子力発電所の事故の大きな原因となった日本においては、こうした考え方が重要である。

 現在、日本は原子力発電の是非に加え次世代に向けたエネルギー市場の在り方が議論されるという重要な局面にいる。そこで専門的知見が不可欠なことは論をまたないが、社会基盤の在り方の最終的な判断の拠り所になるのは、社会的な公正に対する志向と社会的見識である。その視点を失えば、新しい仕組みの中でも専門性を論拠とした閉鎖性は再び息を吹き返すだろう。