在日中国人ビジネスマン数人が、数千万円の現金を集めて、草加にある倉庫へ買い付けに駆けつけた。ところが、草加の倉庫で目にした光景に絶句した。防護服、マスク、防護ゴーグルのダンボール箱は山と積まれているものの、その使用期限はとっくに過ぎていたのだ。現場にある防護服のパッケージを手にすると、その生産日は平成21年(2009年)のものだった。

 現場の作業は非常に雑で、一部の防護眼鏡が黄色く色づき始め、まったく使えなくなっていた。その現場では、日給1万円で集められたアルバイトの中国人留学生などが古いラベルを剥がし、日付の新しいものに貼り直して梱包し、発送する作業をしていた。

「守るべきラインはあるはず」
善意の変質に同胞も憤る

使用期限が過ぎた医療物資
使用期限が過ぎた医療物資(筆者提供)

 在日中国人ビジネスマンが、こうした商品を写真や動画に撮り、中国国内の医療機関に送って使用できるのかと確認したところ、「使用期限切れの防護服などは医療現場では使えない」という回答が返ってきた。周教授とその家族が手を出しているきわどいビジネスモデルに憤慨した在日中国人ビジネスマンは、告発に踏み切った。

 その動きを察した周教授らが告発を阻止しようとして、在日中国人ビジネスマンたちを脅迫した。しかし、私の取材に対して在日中国人ビジネスマンたちは、「私たちは現場の写真、動画などをすべて証拠として持っている。なにも恐れていない。金もうけは別に悪いことではない。しかし、守らなければならないラインはあるべきだ」と心境を語っている。

 新型コロナウイルスの感染から身を守るためのマスク特需が、いつの間にか一部の悪質な在日中国人による「荒稼ぎ」に利用され、マスク狂騒曲へと変質していく。このマスク狂騒曲に関する取材の中で、私は在日中国人社会の「善と悪の両面」を同時に見た思いがした。

 そして、マスク狂騒曲に走っていた人間の中に、実は一部の日本の医療機関も、日本人医療関係者も、そして日本人ビジネスマンも加担していることを指摘したい。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)