「もともと、たいして才能ある野球少年ではなかった」――自身のことをそう振り返る福岡ソフトバンクホークスの和田毅投手。球界きっての「思考派」と言われる和田投手の著書『だから僕は練習する――天才たちに近づくための挑戦』は、単なる野球の技術向上だけには収まりきらない、ある種の普遍性に貫かれているとして話題を呼んでいる。

今回のテーマは「コントロールできないほど大きな問題に直面したときにどうするか」――。オープン戦の無観客試合実施が決まるなど、プロ野球界でも新型コロナウイルスの影響が出ているが、和田投手はこんなときどう考えるのだろうか。ベテラン左腕を苦しめた「肩の怪我」を例に振り返った。

撮影:繁昌良司

僕が向き合うことになった
「出口の見えない闘い」

僕は2018シーズン開幕前の春季キャンプで、左肩の痛みに襲われて以来、1年半にわたって戦線を離脱することになった。
キャンプインのときからなんとなく調子がよくない自覚はあったが、いきなりボールを投げられないほどの痛みにまで発展してしまったときは正直、戸惑った。

また、それまで肘のケガは何度か経験したことがあったが、肩は初めて傷める箇所だったので、そのことも余計に不安を募らせた。
すぐに治療に取り掛かったが、チームが開幕を迎える時期になっても、症状は一向に改善しない。自分の肩はどうなってしまったのか……焦る気持ちを抑えられなかった。

いちばん辛かったのは、それが「出口の見えない闘い」だったからだ。