タニタの働き方新制度、「正社員とフリーのいいとこ取り」の大胆な中身タニタは2017年1月、希望する社員を一旦退職させて「個人事業主」に転換し、業務委託契約するという斬新かつ大胆な制度を打ち出した(写真はイメージ) Photo:PIXTA

あなたの仕事に効くビジネス書の書評を集めた「仕事の本棚」。ビジネスリーダーが読むべき一冊を厳選してお届けします。今回は『タニタの働き方革命』(谷田千里、タニタ編著)です。(評者・ 倉澤順兵)

フリーランスと正社員の良いとこどり

タニタの働き方新制度、「正社員とフリーのいいとこ取り」の大胆な中身『タニタの働き方革命』
谷田千里、タニタ(編著)
日本経済新聞出版社
1500円(税別)

 2019年4月の「働き方改革法」施行により、多くの企業で働き方改革への取り組みが急務となっている。主に行われているのが「長時間労働の是正」だろう。ところが、「退勤打刻をした後に、クーラーの切れた暗い部屋で残業をせざるをえない」など、かえっておかしな結果となったケースもあると聞く。あなたの会社はどうだろうか。

「残業削減」にとらわれず、従業員の「主体性」を発揮させることを主眼においた改革に乗り出したのが健康計測機器メーカー・タニタだ。2017年1月、同社では斬新かつ大胆な制度を打ち出した。それは希望する社員を一旦退職させて「個人事業主」に転換するというもの。名付けて「日本活性化プロジェクト」という。

 本書は、このプロジェクト発足からの経緯と成果とを、タニタ社員たちの声も交えてまとめたもの。プロジェクトを牽引した谷田千里氏は2008年からタニタの代表取締役社長。壮大なプロジェクト名には「日本全体の働く人の活性化に貢献したい」との願いが込められている。

 いったいどんな制度なのか。前述のように個人事業主として独立した元社員は、基本的には社員時代に取り組んでいた業務を「基本業務」として担い、タニタと業務委託契約を結ぶ。他の部署から新たに仕事を頼まれるようなケースでは「追加業務」として請け負い、報酬は上積みになる。個人事業主になれば税務面でさまざまなメリットを受けられるため、社員時代よりも手取りが増えるという仕組みだ。

 契約は「3年契約」を毎年更新。報酬は、直近の社員時代の残業込み給与・賞与をベースにするそうだ。さらにこれまでタニタが負担していた社会保障分も報酬に含めて支払われるため、谷田社長は「フリーランスと正社員のいいとこ取り」と胸を張る。