「賭けに負けたとしか言いようがない」

 一方、武蔵小杉エリアの12棟のタワマン住民でつくるNPO法人「小杉駅周辺エリアマネジメント」(安藤均理事長)も1月21日、川崎市に要望書を提出した。

「小杉駅周辺エリアマネジメント」による川崎市への要望書
武蔵小杉のタワマン住民でつくるNPO法人「小杉駅周辺エリアマネジメント」による川崎市への要望書 Photo:Diamond
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 要望書では、多摩川沿いの樋門(ひもん)の逆流防止策の実施や、JR武蔵小杉駅横須賀線口の冠水対策などに加え、マンションの予備電源やポンプの高層階への移設・増設費の補助、さらに地下電源などインフラに被害があった際のマンション住民用の避難場所の確保など、ハード面とソフト面を合わせた28項目の要望が並ぶ。

 だが、こうした住民たちの訴えが届くかは不透明だ。川崎市は昨年12月、独自の支援策として浸水被害に遭った住宅の居住世帯を対象に、1世帯当たり一律30万円の支給を決めたが、それさえも共用部分のみ被害を受けたタワーマンションの住民は支給対象外だ。

 電源喪失による長期間の不自由な生活や数億円単位ともされる莫大な復旧費用が発生しているため、タワマンの被災者には目下、不公平感が強まっているという。

「結局、賭けに負けたとしか言いようがない」

 停電被害に遭ったタワマン住民の男性はそうため息をついた。男性の勤務先は大手不動産会社だ。

「自分は不動産屋でもあるので、水害リスクはもちろん認識していた。災害が起きる可能性と利便性をてんびんにかけて、その賭けに負けたわけです」

 浸水により電源を喪失した男性が住むタワマンは1月下旬の時点で、まだ仮電源で復旧したにすぎない。使用制限はないものの、住民は節電を心掛けているという。

「コストは最終的には修繕積立金など何らかの形で必ず住民に跳ね返ってくる。住民は皆、今後負担が増えるだろうということは覚悟している。ただし、1人幾らになるかが問題。数百世帯が入居する中、引っ越しを考える住民と、これから40年住み続けたい住民の間で、同じ結論が出るはずもなく、合意形成が難しい。復旧はやらざるを得ないので皆が納得したが、今後はどうなるのか」(男性住民)

 台風19号の後、被災した武蔵小杉のタワマンの中古価格が下落したというデータはない。

 だが、不動産関係者は「今は売りに出しても買いたたかれるのが目に見えているので出物がないだけ。価格に影響が出てくるのは早くても4月以降になるだろう」と口をそろえる。

 災害に見舞われれば築き上げてきたマンション資産価値を一瞬で損なう。では、被害を受ける確率を下げるにはどうすればいいのだろうか。