「縁起の悪い話」が出始めた
東京五輪中止の可能性は?
「もし東京五輪が中止になったら?」という縁起の悪い話が出始めています。「そんな話は今、聞きたくない」という人が大半だと思います。ただ、因果な話ですが、そうした悪い話を真剣に検討しなければいけない仕事が世の中にはあるのです。それが経営コンサルタントという仕事です。
私たち経営コンサルタントは、企業の事業計画や経営戦略についてアドバイスするのが仕事です。必然的に今、目の前で起きている新型コロナウイルスが2020年のビジネスにどのような悪影響を及ぼすのかを、検討しなければいけません。
その過程で避けて通れないのが、「もし東京五輪が中止になったら、わが社にどれくらいの損害が発生するだろうか」という経営者からの質問に対応することです。
たとえ五輪のスポンサー企業ではなくても、「景気回復の最大の目玉」とあてにしていた東京五輪の開催がもしも取り止めになったり、取り止めにまでならなくても開催時期が大幅に延期されたりすれば、景気下振れによる悪影響を避けることはできません。
嫌な記憶ですが、たとえるなら、2011年の東日本大震災とその後に起きた全国的な自粛ムードに伴う景気後退です。五輪が中止になれば、企業はあのときと同じような生産調整を検討する必要が出てきます。
さて本稿では、経営コンサルタントである私が「東京五輪の中止リスク」について、どのような考えからその現実味を見積もっているのかを、お話ししたいと思います。
もちろん、基本的なスタンスとしては、私も「そんなことは起きてほしくない」と思っています。景気が悪くなると、コンサルタントの仕事は企業から真っ先に切られるからです。とはいえ、リスクはどこにあるのか、それをどうシナリオとして想定しておくべきかについて、今回はまとめてみます。
まずは、次のようなことを考えてみます。今は3月上旬ですが、「もし5月に北京で、ないしはソウルで五輪を開催する予定だったとしたら、それは強行できるのだろうか」という思考実験です。