韓国では、外需取り込みを重視した経済政策が続く一方、経済の格差が拡大し、さらにはその固定化が進んだと考えられる。政府が金融・財政政策を用いて内需を喚起しようにも、その余地は限られていると考える経済の専門家や市場参加者は少なくない。その上に最大の輸出先である中国経済の減速が重なれば、韓国は経済運営に行き詰まる恐れがある。

 そうした見方が増えると、韓国からは資金が流出し、場合によってはドルを中心に経済運営に必要な資金が枯渇するリスクは上昇するだろう。今すぐこうした展開が現実のものになるとは考えづらいが、先行きはより慎重に考える必要がある。

 同様のことは世界経済にもいえるだろう。もし新型肺炎から中国経済が混乱し、債務問題への懸念が高まると、不動産バブルの崩壊や金融システムの麻痺などへの不安が高まり、中国発の世界的な経済混乱が起きるかもしれない。

 また、中国経済の減速が鮮明となれば原油価格に下落圧力がかかり、米国のシェールガス・オイル業界では採算が悪化することも考えられる。多くの企業がジャンク債を発行して資金を調達し、それを世界の投資家が購入してきたため、米国内外に影響が波及するだろう。

 主要先進国が新型肺炎による経済や金融市場の混乱を警戒し、政策協調や金融・財政政策を用いた対策を重視・実施し始めた背景には、こうした複数のリスクシナリオへの警戒があるのだろう。言い換えれば、各国は先手を打って経済と金融市場を支え、影響を最小限に食い止めたい。

 ただ、先進国では金融・財政政策ともに発動の余地は限られている。リスクが顕在化した際、韓国をはじめ世界経済にどの程度の影響とそれへの対応力があるか、予見が難しい。世界各国で感染の拡大がどう収束するかも見通しづらい。世界経済に左右されやすい韓国経済の混乱リスクの高まりは、日米をはじめ世界全体で景気減速、金融市場の混乱のリスクが高まりつつあることを示唆している。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)