組織委の関係者は検討内容の詳細について口をつぐむものの、通常開催以外で今後可能性がありそうなシナリオは、以下の4パターンに分けることができる。(1)無観客で予定通りの日程で開催、(2)今年の秋以降に延期、(3)2021年7月以降に延期、(4)大会そのものの中止――の四つである。

(1)の無観客開催については、各競技の国際組織とWHOの電話会議の中で、最悪のシナリオとして話題になったと米「ニューヨーク・タイムズ」が3月5日に報じた。

 組織委の昨年12月時点の予算によると、収入計6300億円のうち、チケットの売り上げが900億円を占める。無観客や(4)の中止シナリオとなった場合、チケット代の払い戻しを求める声が強まることは言うまでもない。五輪関係者によると、チケットは900億円分全てが販売されたわけではなく、払戻額はこれより小さくなる見通しだが、いずれにせよ組織委の収入は激減する。

(2)、(3)のような大会延期のシナリオもまた、悩ましい問題が生じる。例えば、東京・江東区の見本市会場である東京ビッグサイトは、西展示棟などをメインプレスセンター(MPC)に、東展示棟と東新展示棟を国際放送センター(IBC)として利用する。

 ただしIBCはMPCと異なり、巨大な発電機を設置するなど極めて大掛かりな設備だ。もし(3)のシナリオのように来夏以降まで延期された場合、それまでの1年間、もしくは2年間展示場を借り続けることになってしまう。すると、その分新たな賃料が発生する。もっともその金額は、「通常より大幅に値引きされており、五輪のために借り続ける期間が長くなるほど、東京ビッグサイトの減収要因となる」(前出の五輪関係者)との見方が出ている。

 また組織委の収入の過半を占めるのが、国内スポンサーからの収入で、予算によれば3480億円に上る。この行く末も懸念事項だ。中止や延期などIOCの決定によっては、スポンサー企業と組織委、そして仲介料が1割ともいわれる電通が絡み合い、その取り分を巡って紛糾する可能性がある。また巨額のカネの動きで言えば、NHKと民放キー局がIOCにすでに支払い済みの放映権料の扱いにも注目が集まる。

 前出の五輪関係者は、「早く中止または延期を決めるほど余計なコストはかからない。500億円から1000億円を節約することは可能だ」と打ち明ける。

 新型コロナウイルスでもしも五輪・パラリンピックが中止・延期となった場合、今後の争点はどこか。ダイヤモンド編集部は関係者の証言を基に、組織委内部で検討されている、中止や延期で生じる費用や課題を詳報。今後混乱を招きかねないポイントの詳細についてまとめた記事を、ダイヤモンド・オンラインに掲載している。