ブリュッセルの欧州委員会Photo:Reuters

 欧州の指導者らは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の保健医療面の打撃への対処に苦慮しているが、現在次の難局が視界に入ってきている。それは経済だ。今回のパンデミック(世界的大流行)によって、欧州の大部分がリセッション(景気後退)に陥るのはほぼ確実だが、有効な対策を持っている指導者は1人もいない。

 コロナウイルスがもたらす今回の景気下降局面は、どの欧州の政治家にとっても対応能力を超えるものかもしれない。イタリアは、経済的に大打撃となる封鎖措置の最中にある。ウイルスは世界のサプライチェーンを阻害しており、ドナルド・トランプ米大統領が打ち出した欧州諸国からの入国禁止措置がそれに輪を掛けている。

 さらに、多くの欧州諸国の経済は今回の危機が訪れる以前から、すでに危険な状態にあった。イタリアは、何カ月も前からリセッション寸前の状況だった。ドイツは、国内企業の慢性的な投資不足に苦しんでいた。英国のボリス・ジョンソン首相は、ブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)で噴出した感情的な熱気を、経済の再生に転換できていない。これら諸国は今後、回復力不足のつけを払うことになるだろう。