他人の処方箋は
効き目がない

 それにしても、中国式を手本にし、早期防衛に着手したイランとイタリアの状況がますます悪化していくのはどういうことなのだろうか。

 現在、海外の中国人の間でよく読まれている文章がある。欧州在住で4カ国語に精通する中国人女性が執筆したもので、コラムの一部には次のような内容が書かれていた。

「イタリア政府は最大限の警戒感をもって臨んでいたが、かえって封鎖反対の抗議活動やスーパーでの買い占め、監獄での暴動を引き起こし、医療システムを麻痺させるなど国民をパニックに陥れた。イタリア人からすれば、自分の自由を制限されるほど辛いことはない。国情も違えば国民も違うのだ。国家の一声で十数億人を家に閉じ込めた中国はむしろ世界の奇跡だろう」

 初期段階での強制措置は、かえってイタリアの人々の心理に大きな不安をもたらしてしまったようだ。文章には「他人の処方箋は、その人と同じ体質でない限り効き目がない」とも綴られていた。中国の感染病の専門家である復旦大学付属華山医院感染科主任・張文宏氏も、「イタリアは早期防衛の失敗例だ」と語っている。

 中国はウイルス防衛のリーダーシップを世界で発揮したいようだが、中国人の間でもこれに対する見方はさまざまだ。ドイツに移住したある中国人女性は「ウイルスの抑え込みでは好成績を収めた中国ですが、国内の医療問題は依然として課題山積。責任を取りたがらない医師も多く、国民が安心して受けられる医療からは程遠い」と厳しい。

 また、日本で長年生活する中国人男性は「中国の“防疫成功”はあくまで美談づくり。足元で悪化する経済から国民の目をそらすための宣伝に過ぎません」とシビアだ。確かに中国政府は、ウイルス発生国の汚名返上を急いでいる。

 初期の段階で全面的に中国の模範事例を取り入れたのはイタリアだが、中国と同じような結果にはならなかった。目下、ウイルスの蔓延が深刻化するドイツや英国では、中国と違う発想での対策が進んでいる。世界は今、新型コロナウイルスの感染という同じ危機に直面しているが、国の事情や国民性によって、そのアプローチは異なるようだ。