住宅費が年収の3割以上になると
お金が貯まらないといわれる理由
ちなみに、国税庁によると30~34歳の男性の平均給与は470万円、25〜29歳の女性の平均給与は326万円なので、共働きのまま結婚すれば796万円の世帯年収となります。
そこで世帯年収が800万円と仮定してざっくり試算しましょう。手取りは夫婦で640万円。うちボーナスは二人で80万円(年2回で160万円)。毎月の手取りは40万円です。
ボーナスは会社の業績次第で当てにならないので、ボーナス併用返済はNGです。(世帯年収800万円に対し)返済比率を35%で計算すると、毎月の返済額は23万円。固定資産税や各種保険、場合によっては管理費や修繕積立金もかかるので、住宅費合計で毎月26万円かかると仮定しましょう。毎月の手取りは40万円なので、住宅費だけで手取りの65%が消え、手残りは14万円です。
もし一生懸命に節約して、食費4万円・日用品費1万円・水道光熱費と通信費と保険料で3万円に抑えられれば、小計8万円です。しかし、あそ費(家族みんなが楽しんだり成長したりして、みんなが幸せを感じることに使う費用)3万円とおこづかい3万円に圧縮しても、貯めるお金は残りません。
これに対して、返済比率を20%に抑えられれば、毎月の返済額は13万円となります。減った10万円を貯蓄に回せば、子どもの教育資金と老後資金に充てられます。
人生の三大出費に備えるためには、「税金+社会保険料」と同額か収入の2割を貯蓄に充てるのが王道です。三大出費から住宅費を除いた老後資金と教育費だけ確保するとしても、最低1割積み立てなければ貯まりません。
つまり本来は、上限の35%をローン返済に充てるのではなく、最低1割を貯蓄に回して残りの25%を住宅費に充てるのが、ギリギリのラインなのです。
しかも、住宅費にはローンだけでなく、固定資産税や修繕積立金、管理費なども含まれるので、住宅ローンの返済比率は20%が事実上の限界です。返済比率を20%に抑えても、住宅費は毎月の手取りの4割近くになるので、あそ費やおこづかいへの影響は避けられません。
「住宅費は年収の2割以下に抑えるのが理想的で、3割以上になるとお金が貯まらない」といわれていますが、じつはこのような背景があったのです。
日本弁護士連合会の「2017年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、個人再生(個人の場合の実質的な破産処理)に追い込まれた理由の第1位は「生活苦・低所得」で、第3位は「浪費・遊興費」だそうです。
そして、第2位がなんと「住宅購入」なのです。金融機関から住宅ローンを借りて住宅を購入できる人は、人並みに経済力がある人です。それなのに、家を買ってローンを組んだがために、実質的に破たんするなんて、あまりにも悲しすぎる。もし返済比率に余裕があれば、こんなことにはならなかったはずです。
賃貸の場合は家賃の安い家に引っ越せば何とかなりますが、持ち家の場合には引っ越せません。売却しても売却代金で借金全額を返済することは難しいので、本当に後がなくなります。ですから、住宅ローンの返済比率は20%以下に抑えることが鉄則なのです。
賃貸についても原則として、毎月の手取りの2割以下が理想的です。そうすると、徐々にお金が貯まり始めて、老後資金や教育費に余裕ができるだけでなく、マイホームを自己資金で購入できるようにもなります。
たとえば、安田財閥の祖である安田善次郎氏は住宅費を収入の1割以内に抑えて財を成したといわれています。お笑い芸人コンビ、オードリーの春日俊彰さんは「むつみ荘」という家賃3万9000円のアパートに20年間住んでいたそうですが、まさに同じことを実践されたのだと思います。
裕福になる秘訣は、どうやら住宅費にあるようです。