D社労士の説明を聞いたB総務課長は納得した。そしてもうひとつ気になっていたことを尋ねた。

「Aさんは今のところ具合が悪くないので、会社命令で出勤をさせることは可能でしょうか?彼の属する経理セクションは、これから決算業務で多忙になるので今回の休みに関して他の社員から不満が出ているんです」
「それは可能です」
「それで、もしAさんが命令に従わず欠勤を続けた場合は、懲戒処分の対象になったり極端な話クビにすることはできるんですか?」
「就業規則の懲戒規程で定めてあれば可能ですが、Aさんの欠勤はコロナの感染に対する不安が原因であり、ある意味特別事態ですから、懲戒処分を行うことに関しては事情を考慮して判断された方がいいでしょう」
「わかりました。他に気をつけることはありますか?」
「今回は、すでに業務が繁忙期になっているので無理ですが、将来的にはテレワークが可能となるよう業務の見直しを考えてはどうでしょうか」

 D社労士のアドバイスを得たB総務課長は、その翌日の朝、Aに電話し、「Aの個人アドレス宛にメール添付にて以下の文章を送信したので、すぐに確認するように」と伝えた。その内容は下記である。

① 今回の休みについて、3月23日から25日までの3日間は有休を充てるが、26日以降の休みについては、傷病休暇を含む特別休暇、休業手当の対象とならないため欠勤扱いとなること。
② 会社命令により4月2日より出勤してくること。もし出勤できない理由や質問等がある場合は、今日中にB総務課長へ連絡すること。

 この日はAからの連絡はなかった。だが、翌日出勤してきたAの姿を見たB総務課長はホッと胸をなで下ろした。

<参考>
休業手当…労働基準法第26条。使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。
特別休暇…企業が社員に対して福利厚生の1つとして与える休暇のこと。法律では制定の義務がないため、特別休暇の種類や対象者、有給、無給の区別等の項目は就業規則等で定めることになる。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。ご了承ください。