意匠法改正4月1日から改正意匠法が施行されます。その影響とは? Photo:PIXTA

 新しいサイトやスマホアプリを作る際、「これに似たデザインやレイアウトにしてほしい」とデザイナーに発注したり、建物の内装を依頼する際に「あのお店の内装を真似してほしい」などと工事をお願いしたりしてはいないだろうか。

 これまではこうした発注でも法的な問題になることはほとんどなかったが、4月1日以降は訴えられたり、賠償責任を負ったりする可能性がある。なぜなら、コピー商品や模倣商品などからデザインの権利を保護する「意匠法」が4月1日に改正されたからだ。

 意匠とは物品の外観を美しくする形や色・模様・配置などのデザインのことで、その権利である意匠権は特許や商標、著作権と並ぶ知的財産の大きな柱の一つ。デザインに関わる職種以外の人にはあまりなじみがないかもしれないが、実は今回の改正はこの法律が制定された「明治時代以来の大改革」であり、多くの人に関わると言っても過言ではないという。

「意匠法改正」3つのポイント
Webサイト、不動産が保護の対象に

 では、どのような点が改正で大きく変わったのだろうか。日本弁理士会意匠委員会・委員長である、創英国際特許法律事務所の布施哲也弁理士は「改正には大きく3つのポイントがある」と語る。

 まず1つ目が、「保護される対象が拡充」された点だ。これまで意匠登録が可能だったのは基本的に「物品」に限られていた。例えば、車やおもちゃ、椅子など実際に手に取ったりできる有体動産だ。しかし、今回の改正によって、「インターネット上に存在する画像」、そして「建築物」等の不動産、「内装」も保護の対象として意匠登録できるようになった。

「これまでも、例えばプリンターや炊飯器などの機器にあらかじめ組み込まれている操作画像や表示画像は、意匠登録可能だった。ただ、今回の改正によって、インターネット上にある各社のオンラインサイト、ソフトウエアやアプリのデザインまで保護の対象になる。

 建築物については、自然の地形を主たる要素とする施設や公園などは登録ができないが(高低差を利用して2階に玄関を位置させる建物や坪庭を囲む住宅などは登録可)、店舗の外装や内装のデザインにこだわる飲食店は、デザインを意匠法で保護できるようになり、ブランドイメージも守りやすくなるだろう」(布施弁理士)

 2つ目が、「意匠法の効力が強化」された点だ。これまでは、ある意匠を登録した場合、同じ出願人がそれに類似する意匠を登録する「関連意匠」の出願は、最初の意匠(本意匠)の出願後、約1年しか認められていなかった。

 しかし、「最初に販売したものを意匠登録した後も、市場のニーズなどを反映してデザインを改変することはよくある」(布施弁理士)ことであり、今回の改正によって本意匠の出願から10年間、関連意匠の出願ができるようになったのだ。

「これによって1つのコンセプトをベースにしたさまざまなバリエーションのデザインが登録しやすくなり、ブランドの形成や認知にもメリットは大きい」と布施弁理士は語る。