『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』の著者でクレーム対応のプロ、山下由美さんがこれまでにない画期的なクレーム対応の話しかたを初公開。「怒鳴る」「キレる」「自分が正しいと言い張る」「理詰めで責める」「言い分が見当違い」「多人数で取り囲む」「シニアクレーマー」などあらゆるお客さまからのクレームを、たったひと言「そうなんです」と言わせるだけで解決します。

「もはやお客様ではない」とクレームから社員を守るべき瞬間がありますPhoto: Adobe Stock

上得意だからこそこじれることもある

 私が提唱する「超共感法」は、クレームを申し立てるお客さまの気持ちを代弁する言葉を投げかけ、お客さまから「そうなんだよ」「そうなんです」といったYES言葉を引き出し、こちらを「敵」ではなく「味方」と認識してもらうことで、スムーズに解決に導くというメソッドです。

 しかし、目的が「金品」や「誹謗中傷などによる自己満足」といった悪質クレーマーの場合、妥協点や合意点を探しても無駄です。「この方はお客さまではない」と判断し、基本的にはきっぱりとした態度で「交渉を打ち切る」姿勢を見せることが必要になります。

 一方、悪質クレーマーの問題とは別に、「どうしてもお許しいただけない、いったいどう対応したらいいのか」と、多くの相談が寄せられるケースがあります。それは上得意、ロイヤルカスタマーを怒らせてしまった……というもの。

 お店の常連や、売り上げに大きな貢献をしてくださるお客さま、いわゆる「上得意」や「ロイヤルカスタマー」に対しては、スタッフも緊張感をもって接し、阿吽の呼吸でその要望に応えようとするものです。

 ところが、その積み重ねにより、いつしかお客さまが「何も言わなくてもここはやってくれるわよね」「このくらい、やってくれて当然だよな」と特権意識を持つようになってしまうことがあります。

 そんなお客さまが、お店にとっては標準的なサービスを受けたり、スタッフのミスに遭遇してしまったりしたとき、「扱いが悪くなった」「今まではやってくれたのに、扱いを下げられた」と激怒し、関係がこじれてしまうことがあるのです。

 たとえば、次のようなケースです。

ケース:お得意さまが激怒

 美容・健康業界のとあるお店の話です。10年以上通ってくださっているお得意さまがいらっしゃいました。

 そのお得意さまが「最近、関節の調子が悪いから、ここは触らないで」とおっしゃったので、その旨をカルテにも書いて、スタッフ一同気をつけて施術を行っていました。

 ところがある日、とあるスタッフがうっかりその場所に触れてしまったのです。

「痛いっ。何するのよ。そこは触らないでって、前から言ってたでしょう!」

 スタッフは平謝り。しかしお得意さまの怒りはおさまることなく、帰ってしまいました。

 関節に支障が出るような触り方ではなかったものの、もちろん悪いのは担当スタッフです。すぐにお詫びに店長と担当スタッフが行きました。次にオーナーがお詫びに行きました。

「何カ月にもわたって、何度もお詫びにうかがいました。でも、どうすることもできないんです。もう玄関も開けてもらえません……。これ以上、どうしたいいのでしょうか」

 そう肩を落としながら、オーナーは私に嘆くのでした。