顧客からのクレームがハラスメントの域に達し、従業員を心身ともに追い込む「カスタマーハラスメント」が大きな社会問題になっています。この問題をより深刻にしているのが、一見善良そうな“普通の人”が些細なことで自己中心的なクレーマーになっていることです。
こんな悪質なクレーム対応を現場に任せきりにせず、組織として対策に取り組むにはどうすればいいのか。まず、組織全体で共有していただきたいのが、対応できない要求には「断る勇気」を持つことです。
とはいえ、「そんなの簡単にできないよ」という方も少なくないでしょう。そんな方に紹介したい断るための効果的な技術が「3だん話法」です。
無理な要求に現場の従業員は苦しめられている
この事例は、ある食品メーカーから寄せられた相談を改変したものです。相談を受けた私は、「約束してしまったことでも丁寧に断ればよい」と担当者にアドバイスしました。しかし、うまく伝える自信がないとのことで、私がこの男性に電話し、今すぐの訪問は不可能であることを伝えました。
このように、「お客様は神様」という言葉のまま顧客に100%従っていたら、貧乏神や疫病神に従業員が取りつかれてしまったというケースが後を絶ちません。それほど「絶対に無理だとわかっていても相手の要求をうまく断れない」という現場からの相談はとても多いのです。
そんな一次クレーム対応者の方に活用してほしいと思って考えたものが、第1回で解説した「3だん話法」です(参考:カスハラ時代の悪質クレームに潰されないための「3だん話法」とは)。「だん」には3つの意味を込めています。