会社が「もうお客さまではない」と判断する

 会社や店が、お客さまに対してミスをしてしまった。それによってお客さまは憤慨されて、「もうこの店に来ない」とおっしゃった。そこで、何度もお詫びに行ったけども、お許しをいただけない……。

 相手がお得意さまであれば、「なぜ解決しないのだろう」と、担当者も責任者も悩むことでしょう。そして、「なんとか解決したい」と粘ることでしょう。

 ただ、いくら誠意を尽くしてもお許しいただけない場合は、たとえお得意さまが相手であっても、その状況をいつまでも引きずることはおすすめしません。

 問題を長引かせてしまうと、「ちょっとしたミスをしてしまっただけで(あるいはミスもしていないのに)会社にとって10年来のお得意さまを失わせた」と現場スタッフが自責の念にとらわれ、まわりのスタッフも委縮してしまうからです。そしてそれがチームワークやサービスの質に悪影響を与えることさえあるのです。

 たしかにミスをしたかもしれないけれども、その後、再発予防策をとって、会社にとって精一杯の誠意を尽くした――。それでも許していただけない場合は、「ここまでやって誠意が通じなかったのであれば、このお客さまはもう、私たちのお客さまではない」と、会社側が判断しましょう。そうすることで、会社がこのクレームを終了させるのです。

 そして、その判断をスタッフ全員に伝えて下さい。それが「理不尽な事態から会社はスタッフを守ってくれる」「会社は責任を持って判断してくれる」と信頼感を生み、スタッフは安心して働くことが可能になるのです。

 もちろん、クレーム対応の初動では、お客さまの気持ちを代弁して、YES言葉を引き出す超共感法で対応することを忘れてはいけません。ただ、そうした手を尽くしても、お客さまの特権意識が行き過ぎているがために、終わりが見えないケースがままあることを忘れないでください。その場合は、「解決する/しないの判断は、会社がする」という主体的な意識を持ち、交渉を終了することで、スタッフを守りましょう。