余計なことはしないようそっと控えておいて、「あっ口を開きそうだな」「何か聞きたそうだな」と思ったら近づくようにしました。

 そこで初めて、「いかがでございますか?」と尋ねるのです。

部下が働こうとするのを
じゃましない気づかいを

 日本文化の研究で数々の功績を残したドナルド・キーンという博士がいましたが、彼が日本での印象的なエピソードとして挙げている出来事があります。

 キーン博士が京都に留学生として下宿していた時のこと。

 その日は月のきれいな晩で、「月明かりに照らされた石庭を見てみたい」と彼は龍安寺というお寺を訪れたそうです。

 石庭のあまりの美しさに時を忘れ、じっとたたずむ青年。

 彼がぼんやりとしながら一時間ほど見つめていると、ふと「カタッ」という音が。

 何かと思うと、隣には一杯のお茶が置いてあったと言います。

 住職の奥さんが出してくれたのです。

 おそらく奥さんは、じっと石庭を見つめる青年の邪魔をしまいとお茶を出すタイミングを計っていたのだと思います。

 留学生の青年があまりにも熱心に石庭を見ている。これは邪魔しては悪いだろうと、放っておく。頃合いを見て、お茶を差し出してちょっとした世間話をする。

 この感覚が何とも日本的です。

 たとえば、会社で根を詰めて残業している人がいたとしたら、その人にはあえて声をかけないというのも放っておく気づかいです。

「がんばって」と一言だけ。あるいは無言でもいいのでチョコレートやお茶などをそっと置いてあげる。

 無理して付き合ったり、声をかけたりせず、あとは何もせず先に帰ってしまう。

 それだけでも、気持ちは十分伝わると思うのです。

「見てくれてるんだなぁ」と、思ってくれるはずです。

部下に大いに働いてもらうコツの一つは、部下が働こうとするのを、じゃましないようにするということだと思います。