日本のサラリーマンは変わらない

 東京のオフィスはすでに多国籍な空間となっており、多くの中国出身者も勤務する。都内在住で瀋陽出身のCさん(40代、女性)もそのひとりだが、「なかなか在宅ワークにならなくて」と気を揉んでいた。「中小企業なので『給料分は働いてもらいたい』という意識が強く、会社は対策に消極的。社内には『在宅ワークで減給されるくらいなら、出勤もやむを得ない』という空気も強い」(同)。

 上場企業であっても、在宅ワークへの切り替えがなかなか進まない。上海出身のDさん(30代、女性)は、「切り替えに時間がかかるのは、日本の企業は仕事のプロセスを重んじる風潮が強いからでは。上司は在宅ワークする部下をどう管理するか、その調整にとても苦労しています」

 「Dさんの上海の友人はどうだったのか」と上海での在宅ワークの状況を尋ねると、「私の友人は外資企業勤務が多いのですが、そもそも成果主義なので、在宅の仕事ぶりを疑われることはなかったようです」と話す。

 緊急事態宣言下であるにもかかわらず、都心に向かう通勤電車は相変わらず混んでいた。Dさんは駅のホームで積極的に社会的距離をとったつもりが、「どこかのおばさんに割り込まれてしまった」と苦笑していた。

中国の国民は「営業補償」を求めなかった

 日本のテレビニュースは新型コロナウイルス対策で持ち切りだが、東京で働く中国の人たちの受け止め方は、私たち日本人以上にシビアだ。日本では店舗や企業の営業補償をめぐる政府対応についての報道が続いているが、前出のCさんは、「経営以上に、もっと自分の命を心配してほしい」と思っている。

 こう訴えるのは、ウイルス拡大の怖さを、身をもって体験したからにほかならない。中国では家族や友人を亡くした人たちが大勢いる。それはCさんの身近でも起こり、そしてその傷はまだ癒えてはいない。

 中国でも多くの自営業者が事業を失い、多くの人が仕事を失ったが、「今はそれどころじゃない」という認識が強かったのか、ウイルス蔓延下で政府に対する補償要求の声は上がらなかった。