「中国では、飲食店が営業停止を命令されても、事業税などを免除されるのみで、今のところ国からの補償や助成金はありません。国営企業の従業員は別として、私営企業や自営業の従業員は給料を貰えないし、国からの賃金補償もない状態にあります」とCさんは語る。

 もっともこの間、中国の国民が政府に対して強い要求をしなかったのは、決して「共産党が怖いから」ではなかった。「仮に仕事がなくても、数カ月は生きていけるぐらいの貯金があるため」(同)だというのだ。

「家族のつながり」が中国人の根底に

 東京在住25年のEさん(50代、男性)は都心で貿易業を経営している。Eさんも東京の生活者だ。そのEさんが「日本で貯金ができない理由」を次のように語った。

中国人が心配する日本の混雑風景、「もっと命を大切に」の声外出自粛要請が繰り返されても、日本人は「不要不急の外出」をやめられない

「日本はいろいろな名目の税金と社会保険料があり、個人の所得が少ないのに、社会的金銭負担があまりにも重すぎます。サラリーマン世帯にとっては住宅ローンが重い。中国には住民税もないし固定資産税もなく、所得税の税率も日本のように高くはありません」

 人口が多い中国とは容易に比較はできないにしても、日本も「低成長時代」や「少子高齢化」だけを理由に、低所得を容認し続けることはできない。日本はGDP世界第3位を誇る経済大国であるにもかかわらず、一般市民はこれを享受するどころか、不況や天災に見舞われるたびに、その生計は容易に不安定化してしまうのが実態だからだ。

 一方で、中国人が営業補償や賃金補償をめぐって大騒ぎしないのは、「最終的には帰れる家があるから」だとEさんは語る。

「都会の出稼ぎ労働者は、いざとなったら田舎に帰ればいい、都会の通勤族が失業したら親元に帰ればいい。日本と決定的に違うのは『家族のつながり』だと思います。住宅購入も家族が資金援助し、短期のうちに返済を済ます世帯は少なくありませんが、これもつながりがあるからこそだと思います」

 興味深いことに、「死生観」の違いもウイルス対策に影響しているようだ。一部を除いて宗教の影響を大きく受けない中国人は、肉体がなくなれば財産も失うと強く信じている。前出の経営者Bさんも、「“長生きありき”の中国人は、死を恐れる強い気持ちから、外出自粛には相当力が入りました」と話す。

 パチンコ、麻雀、潮干狩り・・・外出の自粛要請を繰り返しても不要不急の外出をする日本の人々に、今誰もが不安を感じている。前出のCさんも同じだ。

「15年間、日本に税金を払い続けてきた生活者として思うのは、『日本人はもっと自分の国を好きになって』ということです」

 ちなみに東京で生活するCさんには、東京での生活を案じる中国の家族や親戚から、帰国を促す電話やメールが殺到した。だが、自分が選んだ国だからと、それに耳を傾けなかった。

 強制措置ばかりが短期終息のカギではない。Cさんのような、国を思う気持ちが今の日本を大きく動かすのかもしれない。