さまざまな企業がコロナ対策をリリースしている。しかし、レジ前の透明の間仕切り設置などを発表したセブン-イレブンがイマイチ評価されない一方、従業員に総額3億円の感謝金を出すと発表したスーパーのライフはネットで称賛を受けている。批判が殺到した安倍首相のズレた動画コラボもそうだが、コロナ対策で高い評価を得られるか否かは「国民の不安に寄り添えているかどうか」がポイントなのである。(ノンフィクションライター 窪田順生)

SNSで称賛の嵐
ライフの従業員への感謝金

セブンのレジ前に設置された「コロナシールド」正しい対策ではあるが、ライフの「3億円感謝金」に比べて評価されないセブンのコロナ対策。安倍首相が叩かれる理由も、セブンと同じ「国民の不安に寄り添えていない」点にある Photo:Reuters/AFLO

「大変な時だからこそ、現場のモチベーションを上げることが大切だということをわかっている。こういう血の通ったことができる企業は素晴らしい」「“コロナに負けず頑張ろう”と檄を飛ばすだけのうちの会社も、ちょっとは見習ってほしい」――。

 首都圏や近畿に275店舗を展開するスーパー「ライフ」を運営するライフコーポレーションが、パートやアルバイトを含めた全従業員約4万人に対して支給した、総額約3億円の「緊急特別感謝金」に対して、SNSで称賛の声が溢れている。

 ご存じのように今、スーパーは外出自粛生活に欠かせぬインフラとして毎日、多くの買い物客が訪れており、週末になると「3密」状態の店も少なくない。そこで心配されているのが、「従業員の負担増」である。

 平時に比べて、仕事量が格段に増えていて肉体的にきついところへ、近い距離で不特定多数の人たちを接客せねばならぬということで、感染の不安も高まっている。もちろん、「ライフ」ではレジ前のビニールシート設置や、アルコール消毒などを行っているが、それだけで従業員の心的ストレスは解消されない。

 そこで会社としては、「厳しい条件で業務に取り組む人たちへのお礼」(広報)として感謝金を出すことにしたというのだが、実はこの施策、本来の目的以外の「副産物」も生んでいる。それは企業イメージのアップだ。

 冒頭でも触れたように、この「3億円でありがとう」というニュースはメディアでも多く取り上げられ、SNSなどでも非常に好意的に捉えられている。中には「会社の帰りに寄って応援したい」という“ファン”も生まれている。

 このイメージアップが、採用にもいい影響を及ぼすことは言うまでもない。コロナ禍が長期化すれば、労働環境の改善のためにも、スーパーにはもっと多くの人材が必要となる。その時、「どうせスーパーで働くなら、給料をちゃんと払ってくれそうなライフにしよう」と、他社よりも多くの人材が集まってくる可能性もある。

 つまり、タレントを使って「ライフは働きやすいですよ」なんてテレビCMを打つより、はるかに効果の高い求人広告を打ったようなものなのだ。そのような意味では、ライフの「緊急特別感謝金」は、従業員もよし、利用者もよし、会社もよし、という三方よしの新型コロナ対策である。