今後、与党が長期間にわたり国政運営を安定的に執権できるようになった一方で、保守陣営は「未来統合党」の黄教安(ファン・ギョアン)代表が前首相の李洛淵(イ・ナギョン)に敗北し、代表も辞任することになった。選挙戦の最中にも、公認撤回や除名運動などの内紛を繰り返し、まとまりのなさと指導力のなさを露呈した。当面保守系は大混乱が続くであろうし、このままでは政権に返り咲く道も遠のいたと言わざるを得ない。

 そこで、改めて選挙戦を振り返ってみるとともに、今後の展望について日韓関係を中心に予測してみたい。

国家権力による監視体制の強化は
今後の政権運用にも生かされる

 総選挙の最大の争点は、本来は文政権の中間評価であるべきだった。だが、韓国及び世界における新型コロナウイルス感染症のまん延で、文大統領がどう対応してきたかに変質してしまった。

 文大統領の、国民の分断を助長した「積弊の清算」、所得主導政策による経済の沈滞、各国首脳の信頼を失った外交政策、北朝鮮への過度な傾斜等の失政は、新型コロナを封じ込めたというただ一つの実績によって、国民による審判を下されることはなかった。国民は新型コロナ撲滅という安定を選んだということでもある。

 文大統領の新型コロナへの初期対応は、右往左往した。新型コロナウイルスの感染力を過小評価して「近々終息するだろう」と言い放ち、防疫に集中せず政治・経済政策を優先させた。最も国民の不興を買ったのは、中国への遠慮から、中国人の入国を阻止しなかったことだ。そのため、大邱と慶尚北道で「新天地イエス教会」信者を中心に新型コロナがまん延し、この地区では医療崩壊が起きて死者の数も増えてしまった。まん延を防ぐためのマスクへの対応も不評だった。

 しかし、文政権は2015年の中東呼吸器症候群(MERS)の失敗を教訓として、徹底的なPCR検査を行った。そして「新天地」信者20万人に対する検査が終わったころから、新規感染者は急減。加えて、GPSなどを活用した国民に対する監視体制を強化し、感染者の追跡を徹底して行った。その結果、新規感染者数はここ数日50人を下回るようになり、文在寅政権の新型コロナ対策は国際的な評価を得るまでになった。

 感染者数の急減は、選挙を意識して検査の実施を抑えているためだとの指摘もあるが、文政権は否定しており、真相は不明である。

 それよりも憂慮すべきなのは、文政権が新型コロナのまん延を抑える過程で強化した、国民への監視体制を継続させることだ。危機に乗じて監視強化の反対派を抑えたことに味を占め、選挙後もこうした強権的手法で野党をはじめとした抵抗勢力を押さえ、文政権が理想とする左派政権の強化に向かって邁進していくことだろう。