今回、児童手当の増額も検討されているのだが、これまでの取り扱いに準じると、児童手当が1万円増えると保護費が1万円減り、総額は変わらない。すると、生活保護世帯の子どもたちは、新型コロナに関する経済的支援から取り残されてしまうことになる。
とはいえ、子どものいる世帯に対して「児童手当や児童扶養手当の増額分を収入認定しない」という運用は困難なのではないかと思われる。子どものいない生活保護世帯を取り残してよい理由はない。
新型コロナは、マスク・消毒液・衛生資材など、すべての家庭に数多くの出費を強いている。生産や流通の困難から価格が上昇している物品も、食料品を中心に多く見られる。結局は、生活保護基準を引き上げなくては対応できないはずだ。
生活保護には、心強い「前例」がある。1974年、第2次石油ショック時の「狂乱物価」に対応し、約20%の基準引き上げが行われている。今回も同様の基準見直し、あるいは生活保護費の「新型コロナ加算」といったものが、考慮されても不自然ではない状況となっている。
今回の厚労省は「やるやる詐欺」に
はならないだろうか

厚労省に問い合わせてみたところ、給付金等の取り扱い、たとえば収入認定をするかしないかについては、「目的に応じて取り扱いを決めていますが、まだ、政府のほうで制度設計中です。この状態では、生活保護での取り扱いも決められません」ということであった。
また、生活保護基準の見直しについては、「可能性があるかどうかはわかりません」と前置きしつつ、「石油ショック時の事例もありますので、経済情勢を見て、検討はしていくことになります。今後も物価や消費の動向を参照して、基準を考えていきたいです」という回答であった。大いに期待したくなる回答である。なお、「新型コロナ加算」の可能性を尋ねたところ、「現時点では考えていない」ということであった。
ともあれ厚生労働省は、感染症と闘うにあたって、日本最大の拠点である。低所得層や社会的弱者に対する政策は、どの国でも結果を大きく左右する要因の1つだ。ぜひ、妖怪アマビエに取り憑かれたかのような活動を期待したい。
(フリーランス・ライター みわよしこ)