―― 筆者のグレッグ・イップはWSJ 経済担当チーフコメンテーター
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新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)による経済的損害が増大しつつある。そのため政府の指導者は疫学者の意見にばかりに耳を傾けて、経済学者の話を十分に聞いていないのではないかとの疑念が強まっている。
無理はない。しかし政治的な偏向のない経済学者が仕切ったとしても、政策は今と大して変わらないだろう。疫学者と経済学者は研究対象こそ異なるが、両者とも統計を多用し、相反する物事を両立させるためのトレードオフを意識しており、研究の方法は似ている。
疫学者はソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)を大々的に実施すれば、逸失賃金、心身の健康へのダメージ、学校が休校になった場合は子どもの学習への影響という犠牲が生じることを承知している。経済学者もパンデミックは都市封鎖(ロックダウン)を行わなくても、長期の欠勤、消費の減少、人命の損失、健康の悪化、不安という犠牲を招くことを知っている。