「一律10万円給付」で生活保護を放置しなかった厚労省の意外な英断「一律10万円給付」は、活保護世帯にとって画期的な出来事となった(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「一律10万円給付」でも召し上げなし
厚労省の画期的な方針転換

 新型コロナに対する緊急経済対策は、様々な論議を呼び起こした末、4月20日、1人あたり一律10万円の「特別定額給付金」(以下、一律10万円給付)という内容で、一応の決着となった。しかも、申請手続きは非常に明快かつ容易である。

 さらに4月21日、厚労省の社会・援護局保護課は「特定定額給付金は収入認定の対象としない」という内容の事務連絡を発行した。役所という存在に対する「通念」、生活保護制度の運用に関する「常識」や「相場感」といったものに照らすと、いずれも椅子からずり落ちそうになるレベルで、画期的な出来事だ。

 生活保護世帯は、生活保護基準(≒月々の生活保護費)での生活は保障されるが、それ以上の生活を営むことは基本的に認められない。通常、年金・児童手当・障害者福祉手当などの公共からの給付は、すべて収入認定(召し上げ)される。

 たとえば、それらの合計が月あたり7万円であれば、生活保護費は7万円差し引かれることになる。しかし今回の1人あたり一律10万円給付に際しては、各生活保護世帯の「使える」お金が、1人あたり10万円増える。

 とはいえ、「日本初」というわけではない。厚労省の踏襲できる「前例」は、既にあった。2009年、リーマンショックによる不況が襲った際の定額給付金だ。このとき総務省は、生活保護世帯で収入認定しないことを明確に述べている。しかし、この定額給付金が1万2000円だったのに比べ、今回は10万円、文字通りの「ケタ違い」だ。

 11年前の「1万2000円」の前例を踏まえて、「10万円」を収入認定しない扱いは、果たして可能なのだろうかと、生活保護制度の界隈にいる人々の誰もが、大なり小なりヤキモキ感を抱えていたはずだ。