グローバルナンバーワンの
部品メーカーを目指す

――昨年2019年には創業75周年を迎えられましたが、全世界の従業員に対し、「あなたが思うムラタとは」というアンケートを実施されています。その中に「『社是』で一番好きなフレーズは」という質問があり、その結果、一番人気だったのは「信用の蓄積につとめる」(30%)でした。反対に人気がなかったのが、「科学的管理を実践する」(6%)でした。これをどう読み解かれますか。

「信用の蓄積」は当社の仕事のベースであり、従業員みんなが一番ありたい姿だと思います。ちなみに二番人気は「これをよろこび感謝する人びととともに運営する」(17%)でしたが、これはチームの中での自分の役割を自覚し、仲間と苦難を乗り越えて成果につなげることの重要性を理解してくれているのだと、とらえています。

 なお、「科学的管理を実践する」が人気がなかったのは、これは当社の業務そのものというか、ある意味で当たり前のことだからかもしれません。

 ただし、デジタル化がさらに進むこれからは、これがより重要になってくると考えています。生産プロセスだけでなく、間接部門も含めたすべての業務を精査して見える化するという「科学的管理」は、見落としている課題を改善するだけでなく、効率も飛躍的に高めてくれます。現状に甘んずることなく常に革新していこうという思いが、「科学的管理を実践する」という言葉に込められているのです。

――いま掲げている長期ビジョン「Vision2025」では、2025年のムラタのありたい姿の一つとして「グローバルナンバーワンの部品メーカーであること」を掲げています。名実ともにナンバーワンになるために、これからどう取り組んでいきますか。

 このVision2025も、未来の主役となる20~30代の若手メンバーでつくり上げたものです。2016~25年の9年間の長期ビジョンとして、3年ごとに全3段階の中期構想で成り立っており、現在は2段階目となる「中期構想2021」に取り組んでいます。ここでは、(1)ポートフォリオ経営の実践、(2)人と組織と社会の調和(ESG)、(3)飛躍的な生産向上と安定的な供給体制の構築、という3つの方針を掲げています。

 特に(1)については、お客様から一番に選ばれる「グローバルナンバーワン部品」で構成されるポートフォリオを目指していて、そのために必要なM&Aも行ってきました。2003年以降の事業買収は20社以上に上ります。

 その結果、グローバルに多様化も進み、海外の開発・生産拠点も増えてきました。将来的には、ある事業の中心が日本発でなくてもいいという日も来るかもしれません。ローカルごとの従業員たちが現地のニーズをしっかりつかみ、それぞれの社会情勢に合った事業運営が不可欠となります。その意味でも、当社がコア・コンピタンスとして掲げる「CSとESがドライブするイノベーション」が重要になります。お客様が認めてくださる価値を創造し続けるCSと、仕事を通じて従業員一人ひとりがやりがいを感じ成長し続けるES、これらが両立するグローバルナンバーワンの部品メーカーになりたい。そう願っています。

ムラタのビジネスモデルは
なぜ模倣困難なのか

――とはいえムラタの一番の強みといえるのは、高付加価値の新製品を日本発で生み出すというスタイルです。原材料から開発、生産設備、製造に至るまで一貫して内製化していることで、一朝一夕ではけっして真似することのできない、極めて模倣困難なビジネスモデルを確立しています。売上げの91%が海外でありながら国内生産が65%を占めているのも、インタンジブル資産(製造ノウハウや帳簿に載らない知財など)の機密保持もあってのことでしょうか。

 もともと当社はセラミックスをベースにしたコンデンサを世界に先駆けて開発しているため、原料から生産設備まで自前でつくらなければなりませんでした。工程が非常に長く、各プロセスの中でノウハウがコツコツと積み上がっていくので、非常にコピーのしにくい事業であることは確かです。

 ただ、十数年前には韓国などの競合他社に技術者を引き抜かれたりして、当社シェアの半分近くにまで迫られたこともあります。ですが、たとえ一部の人材を引き抜かれたとしても、そのノウハウは3年くらいしか持たず、彼らは使い捨てされてしまうというのが現実です。それだけ技術革新が速いのです。

 現在は国内での生産比率が高い当社ですが、今後海外での生産比率が増えたとしても、原材料から開発、生産設備、製造に至るまでの一気通貫した製造プロセスを目指すことに変わりありません。そしてその中で、技術者たちは最先端の技術開発をすることができます。また、業界平均を上回る開発費(業界他社は売上げの5%以下、ムラタは7%程度)を投入しており、技術者の知恵とモチベーションをきちんと形にするための強力なバックアップを続けています。

――最近ではものづくりだけでなく、インドネシアで都市の交通量を把握するデータ事業にも参入されましたね。

 あくまでも当社はハードウェアがメインのビジネスですが、モノからコトへという世の中の流れがある中で、我々も事業を通じてそうした経験しておく必要があると考えたからです。サービス事業を会社のメインにするつもりはまったくありませんが、ものづくりを核にしたサービス分野の可能性を引き出す足がかりになればと思い、チャレンジを始めています。