ソーシャル・ディスタンス以前に
日本には「間合い」という言葉がある
いまや「ソーシャル・ディスタンス」という言葉を聞かない日はない。
「社会的距離」などと直訳されるけれど、ちょっと芸がないなぁと思う。
だって日本語にはもともと「間合い」という言葉があるからだ。
「間合い」とは、単純に考えれば「相手との距離」である。でもよく考えると、この言葉はけっこう深い。実際この言葉には豊かな意味合いが含まれている。
真っ先に思い浮かぶのは武術である。たとえば剣術の小野派一刀流には「切落(きりおとし)にはじまり切落に終わる」という言葉があるという。相手が斬りかかってくる始動のタイミングを見切って、同時に斬りかかる。ボクシングでいえばクロスカウンターだ。自分と相手との間境(まざかい)を、ここぞという究極のタイミングで見切って動く。ここでの間合いは、生死を分ける境界線だ。