日本が南米ベネズエラの“暴君”と急接近している。
4月6日、10年ぶりとなるチャベス大統領の来日に合わせ、両国がエネルギー開発での協力を強化することで合意したのだ。民間企業も乗り気で、総合商社などは油田やガス田の開発で同国の国営石油会社PDVSAと合意。一部の大手商社トップは、帝国ホテルでチャベス大統領と極秘裏に会談するなど、関係強化に余念がなかった。
超重質油が豊富なベネズエラの石油埋蔵量は世界最大規模。しかも昨年来の原油価格急落のせいで資金不足に陥った同国は、外国資本を呼び込む姿勢に転じ、パトロン探しに躍起だ。チャベス大統領が、憲法改正によって自らの無期限再選を可能にするなど独裁色を強めているとはいえ、商社が「今こそチャンス」とすり寄るのも当然だろう。
一方で、チャベス大統領はこれまで、外資が保有する資源権益の接収を繰り返しており、そうした露骨な資源ナショナリズムを危惧する声は根強い。日本勢も同国でいくつもの資源開発を計画してきたが、その多くが頓挫している。
だからといって、この国との関係を軽視するわけにはいかない。「中東では外資勢がプレーできる新規案件は限られ、資源国として台頭してきたブラジルなども外資規制の動きを見せており、技術面で外資の力が必要なベネズエラは最後のよりどころ」(大手商社)なのだ。
加えて、懸案だったパナマ運河の拡幅工事が進行中で、完成すれば大型タンカーが通行できるようになり、ベネズエラからの輸送コストも削減できる。
投資のチャンスであることは間違いないが、「油価が再び上昇すれば、強気に転じて外資を締め出すのがあの国のやり方」と関係者。商機は“暴君”との駆け引きを制することでしか見えてこない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 山口圭介)