香港で再び緊張が高まりつつある。新型コロナウイルスの感染拡大で民主化デモは長らく下火となっていたが、民主派が路上に戻る機会をうかがう一方、香港と中国本土の当局はコロナの流行に乗じて反体制派の運動を封じ込めようとしている。中国当局者は最近、香港に「国家安全条例」の制定を要求しているほか、中国国歌への侮辱行為を犯罪とする法案の可決を阻止しているとして、民主派議員のやり方を強く非難している。また、中国政府の2つの香港出先機関は権力を誇示するとともに、政治的な議論にも口を出している。香港警察は、昨年の市民デモに関与したとして民主派の重鎮らを逮捕した。香港では、コロナ感染防止策としてソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)を義務づけた法律により、5人以上の集会が禁止された。そのため、最近の中国共産党幹部による圧力に対しては、市民は主にネットを不満のはけ口として使っている。ただ、香港では5日続けて新型コロナの新規感染者がゼロとなるなど感染状況が改善していることを受けて、当局は行動制限の緩和を検討しており、デモ隊も復活しつつある。9月の立法会(議会)選を控え、夏に再び昨年のような激しい民主化デモが発生する可能性がある。