日本語のおもしろさを体感できる
まさに「言葉の取り扱い説明書」
安住アナは『話すチカラ』の中で、もともと中学校か高校の国語科の教員を志していたと明かしている。ところが、就職氷河期と重なったために新任教員の募集がほとんどなく、教員の道は断念。
第4章「日本語の面白さにハマる」の中では、「私が『日本語マニア』を自負しているのは、国語教師になりたかったのに、なれなかったからです。たまたまアナウンサーという職業を選びましたが、国語教師に負けないくらい日本語を究めたいと思っています」との思いを記しているが、以降には安住アナによる“日本語研究”の一端も紹介されている。
まずは、数字の数え方。
「今、試しに1~10まで声に出して数えてみてください」と呼びかけた上で「4の読みには『し』と『よん』、7の読みには『しち』と『なな』の選択肢がありますね」と指摘。
そこから少し私見を述べた後に「次に、10から1まで、声に出してカウントダウンしてみてください」とある。
実際、両方とも声に出して数えてみると、安住アナの意図がわかってくる。1から10を数える時には4は「し」、7は「しち」と言うのに対して、カウントダウンをした時には4は「よん」、7は「なな」と言うのだ。
恩師である齋藤氏の名著よろしく、まさに『声に出して読みたい日本語』の醍醐味を感じているのも束の間、安住アナはなぜ無意識にこのような数え方をしているのかについて解説をスタート。
活字になることで、その分析の鋭さがよりダイレクトに入ってくるが、最終的に「日本人は0から10までカウントする間に日本語と漢語、英語まで交ぜている珍しい国民です。私たちが普段使っている日本語には、漢語、英語、それにフランス語などほかの外国語(カタカナ語)も含まれています」と結論づけていく。
その次の項目では「新元号である『令和』のアクセント・発音は8種類あるというのをご存じでしょうか」と切り出し、それぞれのパターンをわかりやすく解説。
こうした「日本語そのものの面白さ」を体感できるという点においても、非常に読み応えのある1冊となっている。
ラジオでは、鳩レース、幻の洋梨の書き取り、パンダの命名といったアイデアあふれる企画を次々と行っている安住アナ。
着眼点はもちろん、その“話すチカラ”に引き寄せられて、それぞれの企画がより魅力にあふれたものになっていく。そんな“安住マジック”の秘密がふんだんに盛り込まれている本書は、読んで楽しく、使えるともっと楽しくなる「言葉の取扱説明書」となっている。
(文/オリコンNewS記者・村岡大河)