「愛国無罪」の名の下に
過激化する若者たち
8月19日、日本の尖閣諸島の領有をめぐり、中国各地で反日デモが広がった。テレビのニュースには、デモ隊が公安の車をひっくり返し大暴れするシーンが映し出された。しかし、反日デモはあくまできっかけに過ぎない。「愛国無罪」という大義名分を借りた抗議の、その矛先が向けられたのは、高圧的に安定維持を続ける中国共産党にある。
デモの参加者は、圧倒的に若い世代が多い。近年、中国各地でさまざまな抗議活動が繰り広げられているが、その急先鋒となっているのが、1990年代生まれの「90后(ジューリンホウ)」、今年13歳~22歳の年齢層に相当する。
この夏、上海でも反日デモとは別の抗議行動が複数発生した。未払いの給与の回収を求め、飲食店で働く90年代生まれの従業員20人が上海市政府前の人民広場で抗議に出た。
阻止しようとする数十人の警察官とにらみ合いに発展。中には「一歩でも近づいてみろ、俺は死んでみせるぞ」とすごむ者すらいたという。
尻込みしないどころか、警察権力すらものともしない、90后特有の「恐いもの知らず」の一面だ。中国語のあるブログでは「彼らの気迫が警察を一時退去させた」とも綴られている。
2011年9月には、広東省陸豊市烏坎村で大規模な村民デモが起こった。烏坎村の書記が、農民の土地使用権を許可なく香港のデベロッパーに売却、収用額と売却額の膨大な差益が発覚し、一大事件に発展したのだ。
40年にわたって君臨した村の悪徳書記を引きずりおろすべく、村民らが選挙で代表を選ぶも、事態は長期化する。そして12月には、デモは人口の過半数を占める8000人規模にまで拡大した。