SDGsへの主体的なアプローチとして
まず、4つの‟統合軸”を考えてみる
SDGsへの主体的なアプローチとして、もうひとつ、ぜひ考えたいのが‟統合軸”の導入だ。
「2030アジェンダ」では、17のゴールは一体で不可分のものであることが繰り返し強調されているが、裏返せば、放っておくと、個別ばらばらの取り組みにとどまってしまう可能性があるということにほかならない。
本稿が具体的に統合軸として着目したいのが、ジェンダー・教育・パートナーシップ・多様性の4つだ。
(1)ジェンダー
ジェンダーはSDGsの5番目のゴールになっているが、他のゴールを実現するうえでほぼ共通して重要な視点だ。「2030アジェンダ」の中でも、「ジェンダー平等の実現と女性・女児の能力強化は、すべての目標とターゲットにおける進展において死活的に重要な貢献をするものである」「新たなアジェンダの実施において、ジェンダーの視点をシステマティックに主流化していくことは不可欠である」とされている。
(2)教育
教育も、SDGsのゴール4として「質の高い教育をみんなに」(QUALITY EDUCATION)とうたわれている。一定水準の教育を誰もが受けられるようにすることは極めて重要だが、それと同時に、SDGsの取り組みを進めていくうえで教育そのもの(教えること)が非常に大きな力になる。その点で、今後ますます重要になるのが、ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)だ。文部科学省によると、ESDとは「環境、貧困、人権、平和、開発といった現代社会の課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組むことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そしてそれによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動」とされる。
日本では2020年度以降、新しい学習指導要領のもとで、順次、小学校からSDGsが本格的に授業で扱われ、教科書にもSDGsに関する記述が登場してくる。近い将来、家庭の中で、大人が子どもからSDGsについて教えられることになるかもしれない。
(3)パートナーシップ
これもSDGs17番目のゴールに「グローバル・パートナーシップ」(パートナーシップで目標を達成しよう/PARTNERSHIPS FOR THE GOALS)として取り上げられている。SDGsの実現、達成のための手段という位置づけである。ターゲットとして、資金・技術・能力構築・貿易・体制面があげられているが、公的セクターと民間セクターのパートナーシップ、企業どうしのパートナーシップ、個人と個人のパートナーシップなど、さまざまなレベルでのパートナーシップがSDGsの実現には欠かせない。
(4)多様性
そして、もうひとつの統合軸として考えられるのが‟多様性”だ。ここ数年でダイバーシティ&インクルージョンというキーワードとともに注目されている「多様性」は、SDGsの取り組みを深めていくうえでも大きな役割を果たす。SDGsの17のゴールの中では取り上げられていないが、次のパートで詳しく見ていくことにしよう。