「ダイバーシティ」は、なぜSDGs実現のキーワードになるのか

前稿で、国際連合(国連)の提唱するSDGs(持続可能な開発目標)を「人類共通の課題カタログ」と称した。ダイバーシティ&インクルージョンマガジン「オリイジン」では、そのSDGsを統合するひとつの軸として「多様性(ダイバーシティ)」を提案している。多様性の視点を持つことで17のゴールそれぞれの実現が近づき、また、17のゴールがつながっていく効果も期待できるのだ。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部)
*現在発売中の『インクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」』から転載(一部加筆修正)

SDGsの‟18番目のゴール”を
一人ひとり考えることが肝要

 SDGsは国連が採択したものであり、SDGsを‟絶対的な課題”のように思い込む傾向も見受けられる。しかし、「国連が採択したから正しい」とか、「必ず守らなければならない」ということはなく、自分たちが主体的に考え、社会や次世代に対する責任を果たすために行動するきっかけとしてSDGsを捉えるべきだ。

 そうしたSDGsへの“主体的なアプローチ”として、本稿では2つのことを提案したい。

 ひとつは「18番目」のゴールを各自が設定することだ。ダイバーシティ社会を生きる私たち一人ひとりが、それぞれに自分が重要と考える“2030年までに達成したいゴール”を付け加えるのだ。

「ダイバーシティ」は、なぜSDGs実現のキーワードになるのか

 もともと、SDGsは多様な立場や主張を取り込んでいるものであり、ゴールの数が多いことが特徴である。一方で、地球規模で深刻な問題になっていながらも取り上げられていないテーマがある。たとえば、戦争(軍備)・難民・宗教・貿易などだ。これらはSDGsのゴールとして設定することが難しいほど、その制定時に各国・地域間での意見対立があったということだろう。

 つまり、2030年までに我々が取り組むべき問題は、非常に幅広く、17に限定する必要はないとも言える。

 日本にとって2030年に向けての課題と言えば、特に、少子高齢化と人口減少、それに伴う地方の衰退があげられる。政府ではSDGsの切り口で、「地方創生」と「少子化対策」に取り組もうとしているが、「地方創生」や「少子化対策」をそのままSDGs日本版の18番目のゴールとして設定すればいいのではないか。

 あるいは、「スポーツ」を18番目のゴールにすることも考えられる。来年2021年は東京2020オリンピック・パラリンピックが開催されるが、スポーツを通じた豊かな社会づくりはその後もさらに進めるべきだ。「芸術」や「エンタテインメント」もそうだ。これらは単なる趣味や娯楽ではなく、社会全体で取り組むべき課題として捉えることで新たな可能性が見えてくるはずだ。