バルセロナの地下鉄Photo:Reuters

 世界各地の都市がコロナウイルス感染拡大を阻止するロックダウン(都市封鎖)を緩和し始める中、厄介な問題に突き当たっている。ラッシュアワーには公共輸送機関に対人距離を確保する「ソーシャルディスタンシング」措置を守らせることがほぼ不可能なことだ。

 当局者や公共輸送会社によると、バスの車内や電車のプラットホーム、地下鉄の車両で乗客に互いの距離を常に2メートル前後確保させるようにした場合、乗車率は最大80%減少する可能性がある。

 また一部の運行会社は、座席や支柱、ドアパネル、手すりを1日に何度も消毒することが厳密に義務付けられれば、都市経済のスムーズな再開が困難になり、景気回復が阻害され、ビジネス会議から学校、大学の授業まであらゆる面に支障が生じると警告している。

 ベルギーの首都ブリュッセルに拠点を置く国際公共交通連合(UITP)のモハメド・メズハニ事務局長は「本当に頭の痛い問題だ」と指摘。「ウイルスに対する治療法が見つかるまで、この状態が3カ月、あるいは半年続いても対処できる。だが、それ以上長引けば、抜本的な解決策を考える必要が出てくる」と述べた。

ニューヨーク市ではコロナウイルス感染拡大防止策の一環として、午前1時から5時まで地下鉄の運行を全面停止し、駅や車両の清掃・消毒を行っている(英語音声、英語字幕あり) Photo:Spencer Platt/gettyimages

 新たな清掃・消毒体制がいかにサービスを損なう可能性があるかを示すのが、6日から24時間無休運行を中止したニューヨーク市の地下鉄だ。現在、午前1時から5時の間は駅を閉鎖し、電車や駅構内を徹底的に清掃・消毒している。同地下鉄網を運営するニューヨーク州都市交通局(MTA)は、乗客の互いの距離を常に6フィート(約1.8メートル)保つことは不可能だとし、保健当局から目指すべき基準について指針が示されるのを待っていると述べた。