想定外のことが起きたらサバイバルゲームだと思えばいい
――確かに、目にみえないコロナウィルスが敵だと思うと、何もかも心配になっておかしくなりそうなので(笑)、サバイバルゲームだと思うくらいの度胸が必要ですね。「もしも自分が感染して死んだら?」とゲームオーバーを想像したこともあったんでしょうか?
精神科医Tomy もちろん、医者である以上は、いつか自分も感染するだろうなと思ってますよ。第2波がまたいつくるかわからないですし、今も病院でたくさん患者さんを診ていますからね。でももし死んだとしても、亡くなったパートナーや父親に会えるからいいかなって思ってます(笑)。
それと正直、死んだ後の世界を、精神科医として見てみたいというのもありますね。今までの人生、後悔しないくらいのことはやってきたから、「死んだら死んだでしゃーないわ」っていう感じです(笑)。
――私も、コロナであっという間に亡くなる人のことを知って、他人事ではないと思ったのでエンディングノートを買いました。Tomy先生ほど、腹は括り切れていませんが……。
精神科医Tomy それはすごく正しいことだと思いますよ。みんないずれは死ぬということを、普段から意識しなさすぎなんですよね。死ぬって、そんなに怖がらなくていいんです。どんなにお金持ちでも偉い人でも、そのうち死ぬのはみんな同じなんですから。
だから、「最悪、自分も死ぬかもしれない」って普段から意識しながら、「でも多文大丈夫だろう」と思って一日一日を過ごしていくのが、精神的に一番楽なパターンだと思います。悲観的過ぎず、楽観的過ぎず、「ポジティブ悲観」っていうことですね。今、つくった造語ですけど(笑)。
最悪の事態を想定していないとパニックになるわよ
――「ポジティブ悲観」ですね。Tomy先生の言葉って、やっぱりインパクトがあります(笑)。
精神科医Tomy 身近な人を喪った経験がある人は、私と同じように「自分も死ぬまでそんなに長くないかもしれないな」って、どこかで達観していると思いますよ。そういう心の持ちようでいられる人が、精神的にも一番強いように思います。
逆に言うと、身近な人の死を経験したことのない人は、過剰に死ぬことを怖がる可能性が高いです。最悪の事態を想定していない人のほうが、パニックになりやすいですからね。
――死ぬまではいかなくても、失業や貧困の問題で、今日食べるものにも困っている人が増えています。そういう人たちに、不安を吹き飛ばす言葉をかけるとしたら何と言いますか。
精神科医Tomy 日本人の特徴だと思いますけど、自己責任とか同調圧力を気にしている人がすごく多いんですね。他人からどう見られるかがすごく気になって、恥ずかしいことはしたくないという国民性が強いんです。海外に行くと誰も人の目なんて気にしてないから、その違いがよくわかりますよ。
だからまず、周りの目というものを意識から取っ払うことです。そして、生きるためにできることは手段を選ばず、何でもやってみること。周りの目をいくら気にしたって、何もしてくれないどころか、苦しみが増すだけです。
失職して、生活保護を受けることになっても、何も恥ずかしいことじゃありません。会社の経営が立ちゆかなくなったら、自己破産しても、人からお金を借り集めてもいいじゃないですか。生きてさえいれば何度でもやり直せますから、国の制度やシステムをとことん使い倒せばいいんです。