辛くて大変な経験って決してムダにならないの

――日本は地震大国で自然災害も後を絶たないので、本当にいつ何が起きてもおかしくないですよね。それでも自戒を込めていうと、喉元過ぎれば熱さ忘れてしまう人が多いように感じます。世界が危機的状況になったコロナショックで、少しはそのあたりの意識は変わると思いますか。

精神科医Tomy ビル・ゲイツみたいに、新型コロナのようなパンデミックが起きることを前もって予測できるほど、危機感を持っている人もいます。けれども、残念ながら日本人はそういう意識に欠けていますよね。

 でも、なんだかんだ言って、100年に一度と言われるような地震や災害が、10年に一回と言わず、それより多い頻度で起きるようになっています。感染症も含めて、ありえないことが次々に起きる時代になっていることは、多くの人が感じているはずです。

 それだけに、何もない当たり前の日常生活がどんなに貴重か、実感している人も増えていると思うんですね。言い方は悪いですけど、今までの日本人は平和ボケが過ぎましたから。

最悪の事態を想定して最高の人生を生きる「ポジティブ悲観」のススメ

――癌を克服した人に取材すると、「残りの人生はおまけみたいなもの」、「第二の人生を生きている」といった話をよく聞きます。それだけに世界が輝いて見えると……。コロナが収束したら、もしかするとそれに近い感覚を持つようになるのかな?という気もしているのですが。

精神科医Tomy 私も多くの人がそういう感覚を持つようになるだろうと思っています。それに、ものすごく辛くて苦しくて大変な思いをした経験って、決してムダにならないんですよ。

 私は、鬱病を経験したから、誰かの役に立ちたいと思って本格的にTwitterをはじめましたし、それが反響を呼んで16万人以上のフォロワーさんにつながりましたし、ツイートをまとめた本もどんどん重版して多くの人に読んでいただいています。あの辛かった経験から学んだことが、こんなにも多くの人に届くとは思ってもみませんでした。

 だから、想定外の大変な経験をした人は、なんとか苦難を乗り越えて、その先の人生で活かしてほしいです。最悪の経験をしていると、「あの時に比べればこのくらい大丈夫」って、ちょっとやそっとのことじゃくじけなくなりますから(笑)。

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