新型コロナウイルス感染の世界的拡大は、日本で学ぶ留学生にも、働く外国人にも影響し、アフターコロナの社会では、働き手の不足が心配される。日本の労働市場においては、外国人の存在がもはや欠かせないからだ。2020年代――外国人と協働し、実りあるダイバーシティ社会を日本人が構築するためにはどうあるべきか?実例とともに考えてみよう。(玉腰辰己)
*現在発売中の『インクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」』から転載(一部加筆修正)
外国人を紹介する「監理団体」が日本には二千数百社ある
外国人労働者と聞いてまっさきに思い浮かぶのは、コンビニでバイトしている留学生たちかもしれません。そのほかの、たとえば、地方の土木工事現場や工場で食品を加工している外国人などは直接に目にする機会は少ないでしょう。が、そういうところにいま外国人労働者が急速に増えています。
わたしが勤める「協同組合ユウアンドアイ」は、そうした職場に東南アジアの方々を紹介しており、すでに300人ほどが来日され、働いています。
かれら外国人を紹介する「監理団体」という機関が日本には二千数百社もあります。
では、なぜわたしたちのような「監理団体」の仕事が必要とされているのでしょう。
たとえば、東北地方の土木業界では人手不足が深刻です。ハローワークに求人を出しても応募者が来ない。やっと来たと思ったら、待遇が不満ですぐに辞めてしまう(なかには失業保険を得るために求職活動を装う例もあるようです)。結局、人手不足で、仕事はあるのに会社をたたむところも珍しくないそうです。
まさに人口減少と高齢化の現実です。
そこに救いの手となっているのが外国人労働者なのです。
フィリピン人土木作業員の場合、本国で働くと月の収入は日本円で2万円から4万円程度です。しかし、日本で手取り10万円をもらえれば、自分の生活費2万円をひいた8万円を家族に送金できます。しかも、本国では仕事が不定期だったり、給料不払いが発生したりと波があるけれど、日本なら収入が安定します。
かれらの月収をわかりやすくいうと、時給790円(地方の最低賃金)で、一日8時間を22日から23日働くと一ヵ月で約14万円になる。そこから、社会保険、所得税、家賃、水道光熱費など4万円を引かれると手取りが10万円になる。そこから自分の食事代2万円を残して、8万円を母国に送金する。残業や休日出勤をすれば、その分だけ送金を増やせます。かれらはこれをよろこびますが、この待遇で働く日本人は限られています。