数多くの情報番組やバラエティ番組に出演して、硬軟自在に的確なコメントをくり出し、全国各地で笑いの絶えない講演会をくり広げ、大学の教職課程では教師の卵たちを前に実践的な教えを展開する齋藤孝 明治大学文学部教授。
むずかしい話も、わかりやすく、ゆかいに、さらに深堀りして教えてくれる『アウトプットする力』は、まさに日本最高峰。その齋藤孝先生が、「話す」「書く」「発信する」が劇的に成長する85の方法を教える。
インターネットの情報でインプット過剰になっている今、勉強でも仕事でもプライベートでも、成果を最大化するには、実は「インプット1:アウトプット9」の“超アウトプット優先”がいちばん効果的。
アウトプットは練りに練った1本より「数」で勝負。齋藤式「15秒」アウトプット術で、成果を最大化する「知的発信法」を身につけよう!

Photo: Adobe Stock

 おそらく、一般的な日本人のインプットとアウトプットの割合は、「インプット9:アウトプット1」くらいではないかと思います。

 気がつけばインプットばかりで、アウトプットは皆無という人もいるかもしれません。インプット過多の状況では、18ページでお話ししたような「知の回転力」を高めるのが困難となります。

「知の回転力」を高めるには、思い切って「インプット1:アウトプット9」の割合くらいまで逆転させる必要があるのです。

 そのための練習方法の1つは、本を5~10ページ読んだら、その本について語ってみるいうものです。

 これくらい小まめにアウトプットしてみることで、初めてアウトプット体質への切り替が実現します。

 この練習をするときに、格好の材料となるのが「古典」です。

 たとえば、中国の儒教の祖とされる孔子と門弟たちの問答を記録した有名な古典『論語』。古典とか論語とかというと、なんだか小難しいイメージがあるかもしれませんが、読んでみるとそうでもありません。安心してください。

 そもそも『論語』は、ごく短い文章の集まりです。自己啓発本のようなものでもあり、手にとってランダムにページをめくると、必ず「これはいいな」という言葉が見つかります。

 その中で「自分が知られていないことを憂えるのではなく、自分が人を知らないことを憂えなさい」という言葉に目がとまったとします。

 その言葉をもとに、自分が考えたことを整理して周りの人に話したり、SNSに投稿してみたりするのです。

「私も会社で全然評価されていない時期があって、そのときは他人を批判ばかりしていた。でも、今振り返ると、自分のことばかり考えていて、周りが見えてなかったと思うようになった」

「この俳優さんはヒットに恵まれない時期があったけど、腐らずに小さな仕事に全力で取り組んでいた。当時、私は○○という作品で彼を見て感動したのを覚えている。だから今の成功には納得するし、まだまだ大成する余地は十分にあると思う」

 こんなふうに、孔子が語った1行程度の言葉に対して、何倍もアウトプットしてみるのです。

 まさに「一を聞いて十を知る」ならぬ「一を聞いて十しゃべる」です(「一を聞いて十を知る」も『論語』を出典としていることにお気づきでしょうか)。

 私も普段からよく学生に対して、『論語』の言葉をもとにエピソードを話す訓練をしてもらっています。

 使いやすいのは、「己の欲せざる所は人に施す勿なかれ」(自分がやられて嫌なことは人にするな)というフレーズ。このフレーズをベースにすると、ほとんどの学生が延々としゃべりまくります。

 孔子は、孔子の言葉を勉強しながら何1つ実践していない人よりも、1つでも実践することに価値があると言い残した人です。