女のコの裏切りと集金が「直引き」最大のリスク

「そうやってあわせると、そこそこの収入になる。ただ、もっと売上を積み上げることもできる。『直引き(じかびき)』とか『裏引き』って言うんですけどね。女のコの給料をスカウトが店からもらって管理する。だから、『その日働いて2万円もらいました、バックが3000円でした』となったら、2万3000円をスカウトがもらって、その中から女のコに5000円とか1万円とかを渡して、残りはもらうと」

悪びれることなく、図を用いての詳細な説明まで

「っていうかね、渡さないこともあります。家を借りてあげて、食事も用意して、仕事場への送り迎えもして、色々買ってあげる。『あとは必要な時に教えて。俺も小遣い使うし、残ったら貯金しておくから』って言って。それだけしたら結構かかりますけどね、残りは全部こっちで引く。いや~『私これだけ稼いでいるのに、何でこれしかもらえないの?』って言われることもあります。そのときは話術ですよ。『将来のためだぞ』って」

 まるで、「家庭の財布の紐を握っている」かのように振舞いながら、売上をかすめとる。これ自体ひどい話だが、もちろん、スカウト行為は法に適った「人材派遣業」ではない。常に警察に摘発される可能性を持っている。

「一番は女のコに逆恨みされて、語られちゃうパターンですよね。あと危ないのは集金の時。いつも出入りしているところ見られていて、それを証拠に『やってるだろう!』と。だから、俺は『直引き』するときでも、女のコに直接もらってきてもらうように仕向けてます。ちゃんとストーリーをつくって、完全に女のコをコントロールできるようにすれば、たとえ女のコ自身がいくらもらっているか把握してても『何で私はこれしかもらえないの?』とすら言わなくなる」

「不思議なもんでね、1週間店に定着させられれば1ヵ月定着し、1ヵ月定着すれば3ヵ月は定着して、3ヵ月定着できれば1年、2年と定着する。段階があるんですよね。段階が上がっていくにしたがってコントロールしやすくなる」

 はじめこそ不安定だった「女のコ」との関係も、いつしか生活基盤そのものが両者の相互依存の中で再生産されるようになる。「将来への夢」や「色恋」から始まった自発的な「感情の依存構造」が、カネや生活基盤を拠り所とするがゆえに自動的に維持される「物質的な依存構造」をも併せ持つようになるのだ。

 そして、少なくとも「当事者のイマ」にとっては「幸福」なその構造に、自動的かつ自発的に従うようになっていく。