WHOを巡る
米中の激しい対立

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、WHO(世界保健機関)など国際機関の運営を巡る米中の主導権争いが表面化している。米国は、WHOが中国への配慮を強め、客観的に新型コロナウイルスのリスクを国際社会に伝えられなかったと批判している。

 例えば、1月30日、WHOは新型コロナウイルスに関する緊急事態を宣言した。その際、テドロス事務局長は中国を震源地にパンデミックのリスクが高まっているにもかかわらず、習近平国家出席を筆頭に中国の対応が素晴らしいと配慮を示した。この姿勢を米国だけでなく、オーストラリアやフランスなども非難した。一方、WHO総会にて執行理事国に選出された韓国は中国に傾斜しつつある。

 5月18、19日に開催されたWHO総会では、台湾のオブザーバー参加が認められなかった。米国は、世界の公衆衛生の観点から台湾の参加を求めた。対して中国は、台湾は自国に帰属する(一つの中国)としてオブザーバー参加を頑なに反対した。

 新型コロナウイルス向けのワクチン開発においても、米中がしのぎを削っている。米国は、自国中心に開発を進め、中国はカナダなどと連携している。WHO総会では新型コロナウイルスに効果を持つワクチンを世界の“公共財”として扱い、最初に開発した企業の特許権を制限することが決議された。しかし、米国は自国の医薬品メーカーの利益を重視し、この決議に慎重だ。WHO総会の開会式において習国家主席は2年間で新型コロナ対策に20億ドル(約2100億円)を拠出し、新興国を中心に公衆衛生体制の整備を支える意思を表明した。この点も踏まえると、国際社会における発言力強化に関して、中国は米国よりも有利に事を進めている部分がある。

 以上より、WHO総会は国際社会における中国の発言力の高まりを世界各国が確認する機会になったといえる。対照的に、米国の主導力の低下は浮き彫りになっただろう。中国は国際社会の公平性や安定ではなく、自国の利益を重視している。米中の利害が交錯し、それに他国が振り回されやすくなっている。

通商・安全保障などの
米中激突

 通商面においても米国は中国への圧力を強めている。最も重要なのが、5G通信機器をはじめ世界的に大きなシェアを持つファーウェイへの制裁強化だ。