支給の遅滞に加え「重複感」も
混乱する政府の雇用維持政策

 政府は、企業が支払う休業手当を補助する雇用調整助成金制度を拡充することで、労働者の解雇を防ぐ取り組みをしてきた。しかし、この雇用調整助成金制度には、(1)企業が労働者に休業手当を支給して初めて申請できる、(2)同制度に申請するかどうかは企業側の判断によるもので、労働者はその判断に関与できない、(3)同制度の申請手続きが非常に煩雑である、といった問題があり、支給は思うように進んでないのが現状だ。

 そこで政府は、休業を余儀なくされている労働者を支援するため、離職していなくても失業したとみなして同じ失業手当を支給する、「みなし失業」という特例制度の導入に向け、新たな立法措置を行う方向で検討に入った。

 このみなし失業は、企業ではなく労働者が自ら申請できるため、生活資金を迅速に得られる。また企業にとっても、休業手当を負担することなく雇用を継続できるというメリットがある。この制度は、東日本大震災や昨年の台風被害などで適用されたものだ。

 他方で政府は、日額の上限8,330円を大幅に引き上げることを検討するなど、雇用調整助成金制度の一段の拡充もまた、目指しているのである。雇用調整助成金制度とみなし失業制度には、重複感があることは明らかだ。どちらの制度を選択するかは企業、労働者の判断に任されるのだろうが、政府の対応に混乱が見られるという点は否めない。

 ところで、このような新たな取り組みが奏功すれば、リーマンショック時よりも雇用情勢が悪化しやすい環境にあるとしても、今後の失業者増加数や失業率は、前述の試算結果の範囲に収まる、と考えることができるだろう。