経済活動が再開した中国の広州経済活動が再開した中国の広州 Photo:Anadolu Agency/gettyimages

経済のグローバル化とともに
生まれたパンデミック・リスク

 新型コロナウイルスの感染が世界で広がっている。昔からパンデミックと呼ばれるような伝染病の大流行は、ヒトやモノの移動が広がる経済のグローバル化と関係している。

 たとえば、14世紀に欧州で猛威を奮ったペストは、もともと中国で流行していたが、モンゴル帝国の建国によりユーラシア大陸との交易が盛んになり、イタリアを経由して欧州全体に広がったと言われている。まさしく、今回の新型コロナウイルスと似たような感染拡大だ。

 15世紀終わりに、コロンブスがアメリカ大陸に到達し、大西洋を挟んだ両大陸間で交易がおこなわれるようになると、ユーラシア・アフリカ大陸からコレラ、インフルエンザ、マラリア、天然痘などが、そしてアメリカ大陸から梅毒がそれぞれ伝わり、世界共通の伝染病となった。

 19世紀前半には、コレラの世界的流行が何度か発生した。こちらは蒸気船や蒸気機関車など交通手段が発達し、イギリスの植民地だったインドとの交易が盛んになったことが影響した。そしてインドからアジア・アフリカ、さらに欧米へとコレラの流行が広がった。

 今から100年ほど前、1918年~19年に猛威を奮い、世界全体で感染者が6億人、死者が5000万から1億人に達したという説もあるスペイン風邪は、その名前とは異なり、米国ですでに感染していた兵士が第一次世界大戦に参戦するため欧州に渡り、そこで感染が広がった。特別な要因が影響しているが、その後の感染の広がりはグローバル化の進展が影響したと考えられる。