このようなイノベーションが起こせたのは、パプリックドメイン化により、コードの利用者側に開発機会が開放されていたことが大きい。またQRコードの開発においては、既存事業のやり方を押し付けず、過度に介入されそうなときに防波堤となってくれた上司がいたことも強調すべきだろう。

 このようにQRコードの開発過程を振り返ると、イノベーションのヒントが各プロセスの細部に宿っていることがよくわかる。局所にこそ革新の神は宿るのである。

一読のすすめ

 本書の特徴として、QRコードの開発・普及の過程に関わった多くのキーパーソンにインタビューしていることが挙げられる。ぜひ本書を手に取り、彼らの生の声に耳を傾けていただきたい。イノベーションが生まれるにはどういう考え方とプロセスが必要なのか、よりリアリティを持って実感できるようになるはずだ。

評点(5点満点)

総合3.8点(革新性4.0点、明瞭性4.5点、応用性3.0点)

著者情報

小川 進(おがわすすむ)

 神戸大学大学院経営学研究科教授、MITリサーチ・アフィリエイト。1964年兵庫県生まれ。87年神戸大学経営学部卒業、98年マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院にてPh.D.取得。2003年より現職。研究領域は、イノベーション、経営戦略、マーケティング。主な著作に『イノベーションの発生論理』『はじめてのマーケティング』(ともに千倉書房)、『競争的共創論』(白桃書房)、『ユーザーイノベーション』(東洋経済新報社)がある。英語論文では、フランク・ピラーとの共著“Reducing the Risks of New Product Development”やエリック・フォン・ヒッペルらとの共著“The Age of the Consumer-Innovator”(ともにMIT Sloan Management Review掲載)などがあり、ユーザーイノベーション研究では世界的な評価を得ている。組織学会高宮賞(2001年)、吉田秀雄賞(2011年、準賞)、高橋亀吉記念賞(2012年、優秀作)などを受賞。

(1冊10分で読める要約サービス flier