阪神電気鉄道がQRコードの実証実験をすると発表した。他にも、昨年12月から開始している大阪メトロや、今年5~6月に予定しているJR東日本など、QRコードの実証実験が相次いでいる。鉄道事業者が狙うのは「磁気乗車券の削減、廃止」。磁気乗車券は、意外にもコストが高いのだ。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
磁気乗車券は
コストが高い!
阪神電気鉄道は1月23日、今年3月から9月までQRコード乗車券の実証実験を実施すると発表した。実験の内容は、関係者を対象に紙媒体またはスマートフォンでQRコード形式の乗車券を発券し、大阪梅田、野田、尼崎、西宮、神戸三宮の5駅に設置した読み取り装置に直接かざして入出場をするというもの。今後、利用者の利便性向上と磁気乗車券の削減を目指して、QRコード乗車券の実用化を検討していくという。
阪神は第一の目的に利便性向上を掲げるが、最終的な目標が磁気乗車券の削減、廃止による券売機や自動改札機など駅務機器の大幅なコストダウンであることは間違いないだろう。
2000年代以降、鉄道事業者はICカードの導入を進め、券売機や自動改札機のコストを削減してきた(「駅からきっぷがなくなる日、カギ握るQRコード決済の強みとは」参照)。磁気乗車券には、券売機で発券する際に「大阪梅田駅から150円区間」といったデータが書き込まれ、自動改札機はこの情報を読み取って入出場の判定をしている。
しかし、磁気データを機械的に読み取り、書き込みする駅務機器は精密機械の塊であり、製造コストが高い。接触部や可動部は券詰まりなどのトラブルの原因となり、定期的なメンテナンスを必要とするため、維持コストもかさむ。そこで鉄道各社は、ICカード導入を機に自動券売機の台数削減や、読み取り部だけで稼働する安価なIC専用改札機の導入を進めてきた。
ICカードの利用率は地域によっても異なる。首都圏では既にICカード利用率が9割を超えているが、関西圏では首都圏に比べて普及が進んでいない。阪神もICカード利用率は6割強というのが実情のようだ。
磁気乗車券を廃止しない限り、コストのかさむ磁気乗車券対応の券売機や自動改札機をゼロにすることはできない。しかし、仮にICカード利用率を首都圏同様に9割にできたとしても、これを10割に持っていくのは現実的ではない。そこで浮上してきたのがQRコード乗車券だ。