入試の目的は選抜なのか資格なのか

 どのような入試を行うのか自校で自由に決められるのは私立校の利点である。とはいえ、歴史の長い伝統校ほど従来のやり方を変えることが難しい。難関・上位校では2021年も従来型の入試を行うところが多数となるだろう。

 それでも、従来とは異なる工夫が必要となる点については以前、検討課題として触れた。

 入試には、選抜なのか資格なのか、言い方を変えれば落とすための試験なのか、学ぶ力があるかを見るための試験なのかという2つの側面がある。どちらの要素がより強くなるかは実倍率によるのかもしれない。

 難関校の多くは実倍率3倍前後で競う。0コンマいくつかの志願者数の動きで、その年の入試の厳しさが語られる。人気の大学付属校などでは5倍、6倍も珍しくない。こうした学校では選抜の側面が強くなる。

 一方で、実倍率が2倍を切るようになると、選抜の側面はだいぶ弱くなる。不合格者よりも合格者数の方が多いわけで、むしろ、その学校での教育に参加することができるか、その「資格」を問う側面が強くなる。

 オンライン入試を模索する学校の多くでは、こうした資格の側面を重視して、その生徒が加わることでいかに多様性が担保されるかを考えることになるだろう。国内の一般の小学校で学んできた生徒に加えて、帰国生や留学生など多様な背景を持った生徒を交ぜる教育を行うことで学習効果を発揮させるというのは、新しい学習指導要領の掲げるこれからのあり方に沿った動きでもあるからだ。

 「うちはオタクの子をたくさん採っていきたい」という意見の学校もあった。1つのことに卓越している生徒という意味合いである。

 この春先からの3カ月余りに及ぶ遠隔授業経験を指摘する声もあった。公立小学校でもオンライン授業が行われるようになっている。一度こうしたICT化を進めた以上、新型コロナ禍が去った後に元の教室のあり方にそのまま戻ることは考えにくい。ポストコロナ時代の教育は、双方の利点を加味したハイブリッド型が模索されることになるというものだ。

 こうした流れは入試にも影響してくる。オンライン入試もその1つである。ただ、そこには高い壁も控えている。「2科・4科」という中学入試のスタイルがそれである。