全人代では香港の自治をなし崩しにしかねない「国家安全法制」の施行が決められた。習近平指導部は香港に集まる外国投資を犠牲にしてでも民主化運動を抑え込もうとしているのである。

 これは、香港の民主化運動が中国本土に飛び火することを懸念してのことからだろう。

 今回の経済対策や国家安全法制は、経済成長より秩序維持を優先させて、中国共産党支配を維持しようとするための「内向き政策」にすぎない。

 それだけ中国国内では習近平指導部や中国共産党に対する不満が鬱積(うっせき)しており、何かのきっかけで火が付けば自分たちの地位が危うくなりかねないと不安視しているのだと考えられる。

 習近平指導部は、中国の覇権拡大から「中国共産党の持続可能性」へと政策の重心を移していると考えるべきだろう。

国際金融センターとしての
香港のゆくえ

 全人代では香港に「国家安全法制」を施行することが決定した。今後、香港は中国本土並みに監視されて言論が統制され、これまでのような民主化運動は困難になり、急速に「中国化」が進むことになるだろう。

 また、香港を脱出しようとする人たちがかなり増えていると伝えられている。

 5月29日の会見で、トランプ大統領は国家安全法制に対する制裁として、これまで香港に認めてきた優遇措置を一部撤廃して、香港にも中国本土並みの規制を適用する可能性があることを示唆している。

 アメリカが香港の優遇措置を撤廃すると、香港ドルの信用度が落ちてこれまでドルベースでおこなわれてきた取引が徐々に難しくなり、外国投資の窓口となってきた香港の価値も失われていく。

 規制の少ない香港は中国にとって欧米企業のマネーとともに情報を取り込み、中国企業が欧米企業に投資するための一大金融ハブである。中国における香港の相対的な価値は低くなったとはいうものの、欧米企業の窓口という機能は上海や深センにはない独自のものだ。