リモート会議を禁止している企業に事情を聴いてみると、次のような返答が続々と返ってきた。

 リモート会議のシステムは、「セキュリティーが脆弱で、機密漏洩のリスクが高い」という理由がまず挙がる。だとすれば、リモート会議では機密情報は取り扱わないということを社員にも取引先にも順守させればよい。機密情報は、パスワードを付したメールか、その会社の機密保持契約に基づく方法で授受すればよい。

 そもそも、リモート会議システムには、「なりすましのリスクなど、サイバー攻撃の標的になりやすい」という理由を挙げる人もいる。私は毎回、主催する会議や演習ごとに、リモート会議のIDとパスワードを変えて、参加者のみに事前にメールで付与し、参加者がアクセスする際にはいったん待機してもらい、本人の氏名が確認できた場合のみ参加を許可している。

 許可に手間がかかると思うかもしれないが、数十人が参加する演習でも、数分で許可できる。私の場合は、ビデオもマイクも常時オンにして会議や演習に参加してもらうので、なりすましかどうかは、冒頭の数分で見極めることができる。

回線状況の不平等を原因に
全員禁止は適切か

 リモート会議は、「回線が不安定で、ハウリングなどが起きやすく、利便性が低い」という意見もある。連日、時には数十名に参加してもらい実施しているが、私の場合は、回線の不安定さを感じたことはない。

 参加者がアクセスしている回線によっては、ビデオの動きが緩漫になったり、音声が途切れやすかったりすることもある。ただ、それは個別参加者のアクセス環境によるものなので、だからといって、全体の利用を禁止するということは本末転倒のように私には思える。

 ちなみに、一部の参加者の回線状況が、その参加者のビデオや音声に影響を与えるからといって、全員のビデオやマイクをオフにして、話し手だけがこれらをオンにして実施、あるいは話し手もビデオをオフにして電話がわりに使用している企業が、かなりの程度ある。これでは、リモート会議システムの双方向のコミュニケーションの効果を享受できないので、ビデオやマイクを常時オンにして実施することが大事だと思えてならない。

 ただ、注意が必要なのは、近い場所から複数の人がリモート会議に参加すると、ハウリングが起きやすいことだ。その場合は、音声出力をスピーカーからイヤホンにかえるか、数メートル以上離れたり、できれば別の部屋に分かれて参加したりすればよい。ハウリングが起きたからといって、リモート会議を禁止したり、全員がビデオやマイクをオフにしたりする必要はない。

 今後、一斉の在宅勤務が緩和されて、一部の社員は在宅で、一部の社員は会議室で、会議や演習に参加する場面も増えてくるだろう。同一場所から参加する場合は、イヤホンで利用することくらいが、気を使う点だ。

 リモート会議を存分に活用して、社員個々のパフォーマンス向上、ひいては会社全体の業績向上が果たされることを願うばかりだ。