コロナ禍を経て商談目的の飲み会が自粛され、企業にとって無駄の排除に繋がっている。しかし、本当にそれだけでいいのだろうか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

定着した新しい取り組み
「無駄排除」で生産性向上も

 新型コロナウイルスの感染拡大を機に、在宅勤務や不要不急の外出を控える生活スタイルがすっかり定着した。外出時のマスク着用、手洗いの慣行、握手や名刺交換に変わる挨拶、電話会議やSlackなどのコラボレーションツールの活用、Zoom飲み会や同窓会など、ここ数ヵ月で私たちが始めた「新しい取り組み」は数多い。

 京都大学総長の山極寿一博士は、「人類の進化を研究してきた文化人類学者として、新型コロナ禍にも人類は適応できると確信している」という趣旨の発言をされたが、私たちのたくましい適応力も、体の中に染み込んだ生存本能のお陰かもしれない。
 
 これまで頻繁に国内・国外に出張し、商談名目で会食してきたことが一切できなくなった結果、経費が浮いて会社の業績が上向いたという皮肉な話も聞こえてくる。無な会議や無駄な業務が淘汰され、会社全体の生産性が向上したところも多いだろう。昨今の堅調な株式市場は、非効率だった日本の旧弊が今度こそ見直されるという、期待を織り込んでいるのかもしれない。

 これまでの経済は、無駄や非効率性を内包しながら成長してきたと考えることもできる。2000年からの20年間で、世界のGDPが2.7倍に拡大するなか、財の輸出入額は3.2倍となった。つまり世界経済は、付加価値の増加以上に、財が国境間を活発に移動していたことになる。

 さらに、同期間のサービス貿易額は、GDP比で50%上昇した。たとえば、世界の航空旅客数は3倍に拡大した。サービス貿易額や航空旅客数の伸び全てを非効率と断ずることはできないが、世界経済にはまだまだ無駄があり、生産性の向上余地があると解釈することもできるだろう。無駄な出張や会食を減らせば、業績が上向くのと同じ話である。