株式市場が連日上昇している。ナスダック総合指数は2月につけた史上最高値が目前に迫り、日経平均株価も当面戻らないと思われた200日移動平均線を上回った。株価上昇の原動力になっているのは、なんといっても売却した株式を買い戻す動きだ。投資家のポジションの偏りを示すS&P500先物のオープン・インタレスト(未決済建玉)は、足下で依然ネット・ショート(売り越し)であり、筆者を含めた多くの投資家の買い戻しが、今しばらくは続くだろう。
それにしても、この株価の動きは強い。
非常事態宣言が解除されたばかりの東京だが、新規感染者数が再び増加傾向にあり、都が独自に東京アラートを発動するなど、感染第二波の懸念は現実となっている。海外を見ても、中国政府の香港への介入を可能にする国家安全法の成立や、米国の黒人暴行死事件に対する連日の抗議デモなど、過熱感が見られる相場の腰を折るには、十分な悪材料が目白押しだ。
それにもかかわらず、日経平均株価が2万2000円台を一気に回復した株式相場の動きを見ると、単に買い戻しだけでは説明できない、何か「大きな力」の存在を感じる。その正体とは何か。
戦時下に匹敵する
深刻な財政状況
目下、景気を支えているのは各国の大規模な財政政策だ。日本政府は5月27日、コロナ禍で苦境に陥った企業を支援するため、第二次補正予算案を閣議決定した。第一次補正と合わせた事業規模は225兆円に達し、リーマン時の経済対策を上回る。新型コロナウイルスとの長い闘いを乗り切るためには、止むを得ない支出だろう。
しかし、その財源は借金に頼らざるを得ない。新規国債発行額は、今年度の補正予算編成に伴う83.5兆円に加え、当初予算で見込んだ63.5兆円の税収下振れ分を考慮すると、100兆円規模になると思われる。その結果、国債残高は1000兆円を超える見通しで、GDP比で見た公的債務残高は、太平洋戦争末期に匹敵する深刻な事態となる。
米国でも非常時の政策が取られている。トランプ政権はコロナ対策として総額3兆ドル規模の経済対策を打ち出し、国債発行が急増している。その結果、米連邦政府の債務残高は25兆ドル(約2700兆円)の大台を突破し、過去最大となった。これに対して、クドロー米国家経済会議委員長は4月6日、その財源として「戦時国債」の発行を検討していると米CNBCテレビに語っている。